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異形にして超珍種な水晶 ロシア産プラジムクォーツの原石

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こんばんは。
サルオです。

すいません。金曜日はドラみさんの担当ですが、今週水曜日に無理を言って代わってもらったので、金曜日に登場させて頂きます。

例のごとく、倉庫で掘り出し物探していると。。。とってもキラキラした黒いものを見つけました!
しかも、この形は、、、見覚えがあります。
そして、10年ぶりくらいにこの石を見かけたように思います。

その名は「プラジムクォーツ」


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あまり聞きなれない名前ですよね。
それもそのはず。この石が入荷したのは2007年のツーソンミネラルショーの時です。
それ以降この石を仕入れたことがないですし、最近ではツーソンミネラルショーでもほとんど見かけることがなくなりました。

おそらく、この頃見つかって出回ったけど産出されつくしされてしまったため、最近では一部のコレクターが少量販売しているだけになってしまっているのではないかと思います。

そもそも、この原石が入荷した時、僕まだ入社して2年目くらいの時でした。
先輩社員に「店舗に案内するための説明文章を用意して」と言われ、この石について調べたので入荷した時のことは何となく覚えています。

確か「プラジムクォーツ」という名前は現地で売っていた人が呼んでいた名前だったんですよね。
そのまま当社でも商品名を「プラジムクォーツ」としたのですが、当時「プラジムクォーツ」でネット検索しても全く出てこず、どういう石なのか調べるのに苦労したように思います。
(どのような内容にしたのか記録が残っていないし、覚えてもおりません)

そして、現在も「プラジムクォーツ」という名前で出てくるのは当社アナヒータストーンズや”からさで”しかないですね。
もしかしたら、本来の呼び名が違う?ということも含めて14年ぶりに再検証していきたいと思います。


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まず疑問に思うのが本当に「水晶なのかどうか」ということ。
とても我々が知る水晶の形とは異なるように感じます。

ポイントの先端である錐面(すいめん)は確かに水晶のように尖がっています。
しかし、一番気になるのが柱面。


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とんでもなく凸凹しています。
その凸凹はアイスクリスタルのような蝕像(しょくぞう:鉱物が自然界において溶けて形が変わる現象)とは異なるように見えます。
どちらかというと本来真っ平である柱面のはずが、細かい水晶の先端のような錐面が寄り集まったようです。

この形だけ見ていても面白いのですが、さらに、光を反射してキラキラしています。
上の写真は特別に強い光を当てているわけではなく、蛍光とかでストロボを切って撮影しております。

これだけ見ると水晶ではないのでは?と思うかも知れませんが、これは間違いなく水晶です。
海外の鉱物データベースにも「Quartz」と書いてあったので間違いないでしょう。

ではなぜこのような特徴的な形や輝きを見せるのでしょうか。

それには水晶に含まれる内包物が関係しているように思います。

水晶に含まれている内包物は「ヘデンバージャイト」という名前の鉱物です。
和名は灰鉄輝石といいます。
和名の漢字は成分を表していますので、輝石の成分(Si2O6)に灰(カルシウム)と鉄を含んだ鉱物です。
近い成分の鉱物としてダイオプサイト(透輝石)があります。

では、どのような形状でヘデンバージャイトが水晶に内包しているか見てみましょう。
おおよそ光を通さなさそうな見た目をしていますが、そこやはり「水晶」ということで期待して光を当ててみます。


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ヘデンバージャイトが細い繊維状になって水晶に内包しているのが分かります。
もう一か所別の個所を見てみましょう。


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やっぱりそうですね。
水晶の先端部分は繊維状になっていることが分かりますが、中部分は全く光を通さないので分かりません。
つまり、中部分はヘデンバージャイトが集まって塊になっているのでしょう。

塊になると黒っぽく見えますが、光を当てた先端部分を見る限り濃い緑色が集まることで黒く見えていることが分かります。

このように大量にヘデンバージャイトの成分が入ることで水晶の成長が阻害されてこのような変わった形の結晶に水晶が生長してしまったのではないかと思います。
鉱物のデータベースによるとこの特徴的な原石が産出される場所はロシアのダルネゴルスクのほぼ1か所だけです。

ダルネゴルスクといえば、以前ドラみさんが「水晶好きのためのマニアックな水晶」として紹介していたダルネゴルスク水晶がありました。
ダルネゴルスクには変わった水晶がたくさんあるのですね。

ちなみに、この水晶にくっついている鉱物がもう一つあるのですが気付きましたか?
下の写真の下の方です。


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オレンジ色をした鉱物です。

すぐに答えを言ってしまいますが、これはガーネットです。

ガーネットといっても色々ありますよね。
濃い赤色をしたアルマンディンやブドウカラーのロードライトガーネットやヘソナイトやツァボライトといった変種を持つグロシュラーなどなど。

どのガーネットになるのか、実は考えるまでもなく答えは既に書いたようなものなのです。

これに気付いた方はとっても素晴らしいです。

つまり、
ヘデンバージャイトの和名は灰鉄輝石と書きました。

ガーネットの和名は柘榴(ざくろ)石です。

そうです。
このガーネットの答えは灰鉄柘榴石(アンドラダイト・ガーネット)です。

面白いですね。
英語にすると関連性は全くないように感じますが、成分や見た目の形状を表す和名は共生する鉱物を関連付けてくれています。

ところで、話を戻しますが「プラジムクォーツ」という名前について、現在の僕の見解ですが、世界的に見えてもあまり使われていないようですね。
この原石を売っていたロシア人の方がつけた名前なのかも知れませんが、どうやら浸透しなかったのかも。。。

鉱物のデータベースではクォーツ/ヘデンバージャイト/ガーネットと分けて書いてあったので、ヘデンバージャイトinクォーツwithガーネットが正しい呼び名になるのかも知れません。

しかし、産出地の人が「プラジムクォーツ」と呼んでいるのならその名前を使うのも粋なものでしょう。
出雲地方において「碧玉」を「めのう」というのと同じことだと解釈させて下さい。(ちょっとニュアンスが違うかも)

最後までご覧頂きありがとうございました。

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