創業119年、めのやが受け継いできた勾玉の歴史、その原点である「出雲石」。
古に遡る出雲石の歴史
出雲石の歴史は大変古く、弥生時代・古墳時代まで遡ります。出雲石が発見されたのは恐らく弥生時代といわれており、それまで日本の中で緑色の石といえば糸魚川の翡翠でしたが、出雲石が発見されてからは出雲石に変わってきました。弥生後期からは全国で花仙山の出雲石が用いられ、古墳時代に入ってからは当時の大和王権が各地の首長に配布する物の中に出雲石の勾玉が加わります。弊社の運営する「いずもまがたまの里 伝承館」のミュージアム内では地図付きで展示していますが、古墳時代に作られた全国の古墳を調査した結果、北は函館~南は宮崎南部(鹿児島との県境付近)まで花仙山産出雲石で作られた勾玉が出土しています。
当時は今と違い情報網、交通網が全く発展していない時代です。その時代に函館~宮崎まで出雲石の勾玉が出土するという事は、それが日本全国でどれだけ貴重なものとして扱われ、当時の権力者をはじめとする人々にとって大切なものだったかが良く分かります。さらに、古墳時代中期に作られたとされる現在の奈良県・橿原市にある「曽我遺跡」は大和王権が勾玉作りの生産・流通を直接管理するために作った当時全国最大の工房跡と言われ、その遺跡からは大量の花仙山産の出雲石が出土しています。玉造の職人が大量に呼び寄せられ、出雲石を使った勾玉作りを行っていた事から、当時の大和王権にとっての「出雲石」と「勾玉」の価値は現代の我々の創造を超えるものであったと思われます。また古墳時代後期になると今度は一極集中の形で玉造温泉での勾玉作りへと変わっていき、花仙山の畔にある玉湯川周辺に工房が集中し、現在の玉造温泉を形作っていきました。
日本最高品質の碧玉、出雲石
出雲石の特徴は、なんといっても「日本最高品質」という点です。日本国内で“めのう”の産地はいくつかありますが、良質な青めのう(碧玉)が採れるのは玉造温泉の花仙山のみです。青めのうそのものは全国のめのうの産地で多少採掘されています。しかし特に質という点では出雲石にとてもかないません。また量も極めて少量採掘される程度で、基本的には青以外の色での採掘であったようです。色、艶等の質の面でも日本最高品質である出雲石が花仙山で豊富に採掘できたからこそ、他の石と違いこれほどまでに全国各地にその名が知れ渡ったのではないかと思います。
そんな出雲石も昭和初期頃までは採掘専門の職人が花仙山の山肌に手作業で穴を掘り、採掘していました。今でもその頃の穴が花仙山には多数存在しています。しかし現在では花仙山での採掘はしていません。出雲石は金等と同じで脈上に連なって出てきます。しかしいくら掘ってもその脈に当たらなければただの土しか出てきません。また金属ではないため、金属レーダー等を使ってもその脈を探る事が出来ません。いくら脈に近くても、脈から1m離れていれば何も出てきません。採掘を行うということは大変難しいことなのです。
弊社は118年前からめのう細工を行っており、今から6年程前の2012年10月、約50年ぶりに出雲石が採掘致しました。これもたまたま山肌に脈が浮き出ているのが見えた事から、四代目新宮正朗が重機をレンタルして採掘したものです。その際に採掘した量で、あと50年ほどは出雲石の勾玉を作り続けられると思います。ですが裏を返して、あとたった50年分しかないと考えれば、その貴重さをご理解いただけるかと思います。
良質な石を見分ける勾玉職人の目利力
色によって粘度の異なる感覚
基本的には緑色が薄いのは原石の外側に近い部分、そして内側に近づくにつれて緑色が濃くなっていきます。この濃さは成分の微妙な違いによるものでもあり、また内側程天然の圧力がかかって密度が濃くなるため、緑色が濃くなるほど硬さも硬くなる傾向があります。
勾玉職人曰く、「緑が濃いと硬い、緑が薄いと粘りが出てくる」と言います。
勾玉を削る際の手の感覚では若干の粘りがあるような感じになるそうです。実際に糸を引くような粘りが出てくる訳ではありませんし素人には全く分からない感覚ですが、それが分かるというのは日々出雲石を扱っている職人ならではの微妙な、繊細な感覚が垣間見れます。
出雲石は緑色が濃いほうが良いのか?
出雲石の中心部は非常に濃い緑色になる事が良くあります。緑色が濃い、という意味では薄皮が付いているほうが良いのかもしれませんが、緑色が濃ければ濃い程、色は均一になっていきます。逆に緑色が薄い部分は独特の色むらがあり、同じ模様が二度とない一つ一つに個性のある原石でもあります。
緑色が濃いほうがいいのか薄いほうがいいのかは、その人の好みによる部分が大きいと言えます。
「令和」の時代がみなさまにとって素晴らしいものとなりますように。
そのお手伝いを「出雲石」を通してできるのであれば嬉しい限りです。
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