石の音、ときどき日常

新コスメにまつわる神話や風土の話 その12 ~出雲地方に見る荒神信仰(藁蛇)~

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出雲発 祈りをテーマとした
温泉水×和漢コスメ誕生。

この冬、めのやから新しく誕生する
コスメブランドについて、
今回は古事記、出雲國風土記を通し
出雲國が古代より医療・医術の國だった事を
ご紹介していきたいと思います。

今回は出雲地方の神社に多く見られる
「藁蛇(わらへび)」。

やイネ科の真菰(まこも)を使い
御神木などに巻きつけ、豊穣の感謝や
祈願をする風習をご紹介したいと思います。

 

その12 ~出雲の荒神・藁蛇信仰~

さてさて件の荒神(こうじん)、
どんな神様なのでしょうか?
ちょっと書かせていただきますね。

出雲地方で「荒神」といえば
1984年、358本の銅剣の発見で
全国の注目を集めた「荒神谷」を
連想する方も少なくないと思います。

当時、日本各地で発見された
銅剣の総数は300余り。
それを一箇所の発見数が
上回ったのですから
かなりの衝撃だったと思います。

この谷の地名由来は
祀られている「三宝荒神」に由来します。
この「荒神」とはいったい
どんな神様なのでしょう?

結論から言いますと、様々な神様に
派生していて「この神様」と断定するのが
難しい神様のようです。

民俗学者の柳田国男はこの荒神を
「荒野の神」ということも出来るが
やはり「荒ぶる神」という古称に
基づくものと考える。(私なりの意訳です)
と著書に記しています。
かなりザックリした括りですね。

Wikipediaには
「台所の神として祀られる神格の一例。」
と、竈神(かまどがみ)として
説明しています。

ですが、竈神でWikipediaで検索すると
「岐(くなど)の神」とあり、
牛馬の守護神、魔除け、厄除け、
道中安全の神様とどんどん派生し、
荒神谷で出てきた三宝荒神は仏教で
神道は竈三柱神であるとか、もう
書いてる私も何がなんだか・・(’_’;)

前出の柳田国男も在来神と外来神の
習合で多様化していると述べ、
「神々の本源を区別することは困難だ」
と結び、「荒ぶる神」とひと括りにした様です。

「竈神」は火が轟々と燃える事から
「火事」を連想させ、
人の手に負えなくなる「荒ぶる神」と
なったのでは
ないかと想像します。

そういった意味では
荒神=スサノヲの図式もあり
出雲大社の境内摂社、素鵞社の祭祀で
戴ける御札は「竈に貼ってください」と
言われたの覚えています。
荒神→荒ぶる神→スサノヲ→竈神
といった変遷を経ているようです。

また所によっては荒神=カグツチと
ズバリ火の神様と呼ぶ場合もあり
様々すぎてザックリ括るしか
出来なかったのだと知ることが出来ます。

冒頭から面倒な話ですが
この「荒神」は
地域のよって様々に変化していて
共通しているのは「荒ぶる神様」で
社殿が無く祀ってある。
というところでしょうか。
そうなんです。
神社境内によく見る荒神さんは
御神木があり、その周りに御幣が
刺してある風景です。

その中で目を引く荒神信仰の
象徴はなんと言っても藁蛇ではないかと
私は思います。

ご存じない方もいらっしゃるかと
思いますので、まずは写真を。

田田神社 2017年10月撮影。

ワラを撚り合わせ蛇に見立て
御神木にグルグルと巻きつけてあります。
こちらは大きな御幣が1本。

こちらは石碑に巻き付く藁蛇。
御幣は神垂(しで)が取れ、
竹だけになっています。


出雲大社境外摂社 阿須伎神社 2017年7月撮影。


鞆前神社の大荒神 2017年10月撮影。


志多備神社のスダジイに巻き付く藁蛇。2019年8月撮影。
水木しげる氏がヤマタノオロチと称した椎木に
巻き付く県下最大級の藁蛇。


東生馬神社本殿後ろの藁蛇。2020年11月撮影。
大きさとその整った造形は
美藁蛇と言いたくなるほど(笑)

神社によっては大変大きなものや
どうやって作ったのだろう?
と、その技術に驚くような蛇もあり
その土地土地で独自の風習が有るように
感じることが多くあります。

昨年11月の初めに、出雲大社の境外摂社、
命主社の藁蛇の製作に
立ち会う事が出来ました。
その時の写真を。

この時は、参加者の方が育てた
「真菰」を使い、藁蛇を作りました。
真菰は出雲大社本殿の両脇のお社の
注連縄の材料もそうで、
稲藁と同じ、まるで細い剣の様な
形をしています。

その形や実際に手を切るような
葉の形状が表す通り、穢れや様々な悪を
断ち切る意味のある植物です。

用意された真菰。

例年の藁より少ないそうですが
御神木を巻くのに足りそうだとの事でした。

まずは男性3人で頭を作っていきます。

頭が出来ました。
舌もあります(^^)

頭の後ろに残った真菰に更に継ぎ足し
ひねり、撚りながら

お互いの持つ束を替えていきます。
力がいる作業です。

腕ごとねじり、葉を撚り合わせ
少しずつ胴が伸びていきます。
後ろに控えている人が
胴体の先が細くなると継ぎ足し編んでいきます。

足した所は毛羽立ちますが
解けることは無いようです。

いよいよ葉が無くなり、
最後は細く、さながら蛇の尻尾です。

30分ほどで出来上がりました。
命主社背後の御神木に運びます。

先代の藁蛇は木から解かれ
根元に放置されます。
土に還るのでしょう。
藁蛇を巻きつけると
蛇の口に日本酒を注ぎます。



最後に氏子の方が二拝四拍手一拝をして
藁蛇の架替えは終了しました。

石の祠が見えます。
荒神さんとしては珍しい例です。

神社の注連縄も蛇が由来という
説がありますね。

聖域を区切る結界である注連縄。
そのモチーフは稲の豊作を願う
雲・雨・雷(稲妻)という説と
雌雄二匹の蛇が絡み合う様で
子孫繁栄を表すという説があります。

2年前、出雲大社神楽殿の注連縄の
撚り合わせに参加させて頂く
機会がありました。

地に横たわる注連縄を近くで見ると
確かに大蛇の様な
うねりでした(゜□゜;)

地域によっては魔除け災い除け、
または五穀豊穣の祈念と感謝を表したり
土地神様を鎮める役割だったり・・・

1717年に編纂された松江藩の地誌
「雲陽誌」を整理した岡義重によると
雲陽誌に載っている荒神さんは4,805!
水神さんは337だそうです。
同じ様に分類される神様ですが
圧倒的に数に差が有るようです。

人の力ではどうにもならない自然への畏怖や
太陽と水と土から育つ五穀への感謝。
そういった想いが藁蛇には
込められているような気がしてなりません。

出雲地方の神社で
藁蛇に会うことがありましたら、
本殿に参拝するような気持ちで
手を合わせてくださったら
いかがでしょうか?

もしかしたら参拝された神社を
支えてくださった存在かも
しれませんから。

今回は出雲地方に多く見られる
荒神、藁蛇をご紹介させて
いただきました。
本日もお付き合いくださって
ありがとうございます。
ではまたの機会に。

 

新ブランドについて◆

出雲の人は雨が降れば土地を清め、
風が吹けば厄を吹き払うといって
目には見えない存在を身近に感じ
大切にしています。

遠い昔から人々の生活と共にあった
出雲の薬草。
遠い昔からやさしく、
柔らかく湧き続けている玉造の温泉。

この土地の人たちは自然に感謝し、
生があることへの感謝を静かに宣って
繋いできました。

一日の終わりに、
自分の中のささやかな儀式のように、
明日に祈るように。

「リセット、癒し、整える」ことで
健やかに明日を迎えるためのプロダクトです。

 

◆おなじ風土のもとに織りなす文化が共鳴し循環することを目指して◆

化粧品は温泉水と自然由来の成分から製造。
出雲地方で生まれた文化が造り手と共に共鳴し
循環していくことを目指しています。

主成分は島根県産の真菰(まこも)、
やまもも、塩、そして日本古来の御守り
「勾玉」を継承している
めのや本店から湧き出ている玉造温泉水。

真菰はしめ縄や神事にも使われ、
「神が宿る草」と呼ばれており、
やまももはイザナミイザナギの
黄泉の国のくだりに登場。
神の名前を持つ果物と呼ばれていました。

いずれも出雲風土記に登場する薬草です。
古代出雲は医薬の国とも
いわれていたことからも、
古来より出雲の人にとって
薬草は身近な存在でした。

日本古来より伝わる薬草と
洗い浄めるという文化。
気持ちをリセットし、
心身を癒しながら
みずみずしい肌へと導きます。

この冬の発売を
どうぞ楽しみにお待ちください。

 

 

新コスメにまつわる神話や風土の過去のブログは下記から

新コスメにまつわる神話や風土の話 その1  ~ 玉造温泉 ~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その2  ~古代出雲は医薬の国だった 稲羽の素兎編~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その3  ~古代出雲は医薬の国だった ヤガミヒメ編~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その4   ~古代出雲は医薬の国だった 大国主の蘇生編①~

新コスメにまつわる神話や風土の話その5   ~古代出雲は医薬の国だった 大国主の蘇生編②~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その6 ~伝説の医者がモデル?スクナヒコナ編~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その7 ~ちっちゃな神様の足跡を追う スクナヒコナ編②~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その8 ~ちっちゃな神様の足跡を追う スクナヒコナ編③~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その9 ~ちっちゃな神様の足跡を追う スクナヒコナ編④~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その10 ~ちっちゃな神様の足跡を追う スクナヒコナ編⑤~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その11 ~出雲國風土記~

 

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