鉱物と暮らしのアイデア帳

【ショートコラム】同じ物語が書かれている? 「古事記」と「日本書紀」の違い

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ライター・夏生さえりが聞く「出雲に伝わる日本神話と、勾玉のお話」。ショートコラムでは、記事には書ききれなかった内容をご紹介します。

【前編】出雲大社は巨大神殿だった…? 縁結びと言われる理由とその歴史は
【後編】出雲は“トレンド発祥の地”?勾玉から紐解く出雲の歴史

話し手:笹生衛先生(國學院大学教授)
聞き手:夏生さえり(フリーライター)

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Q.「古事記」と「日本書紀」、どちらにも同じような日本神話の物語が書かれていますよね。この二つはどう違うのでしょうか? 学校で習った気がするのですが、どうしても思い出せません。

古事記と日本書紀は、8世紀はじめ頃、天武天皇の命令によって作られました。この二つにはたしかに同じような物語が書かれていますが、「編集方法」が大きく異なります。

古事記は全3巻から成り、国内向けに書かれた物語です。天皇の成り立ちや正当性が、ひとつの物語を通して書かれています。特に面白いのは、漢字がほとんど「当て字」のように使われていることですね。漢字自体が持つ意味よりも、とにかく日本語の「音」にこだわって書かれている。このことから、おそらく「語るため」に作られた書物だったのだと思います。

一方の日本書紀は、30巻という膨大な情報量が純粋な漢文によってまとめられています。この「漢文」の形式からわかるように、じつは日本書紀は「海外向け」なんです。

当時の中国人が日本を訪れた際、「私たちの国はこういう歴史がありますが、あなたたちの国はどうですか?」と聞いてくる。その時、自国の成り立ちや歴史をきちんと説明できるよう、あらゆる情報を網羅的に書いたものが日本書紀。物語性はさほど重要ではなく、「こちらではこう言われているが、あちらではこうも言われている」というように相対的な視点が大事にされています。

つまり、古事記は語るための“物語”で、日本書紀は外交のための“資料集”といったところでしょう。

 

編集:Huuuu.inc
執筆:夏生さえり


フリーライター、CHOCOLATE.inc プランナー。大学卒業後、出版社に入社。WEB編集者として勤務し、2016年4月にライターとして独立。企画、取材、エッセイ、シナリオ、ショートストーリー等、主に女性向けコンテンツを多く手がける。著書に『今日は、自分を甘やかす』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『揺れる心の真ん中で』(幻冬舎)、他。
Twitter:https://twitter.com/N908Sa

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