めのうさとえすこな散歩

【めのうさとえすこな散歩】神在月 出雲大社 |「縁結び」の地、出雲に八百万の神々が集まる! 第4回 |「大国主命 サクセスストーリー 第二部」

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神々のお集まりになられる地『出雲地方』より、こんにちは。
オンラインショップ担当の畑です。

前回より始まった「大国主命のサクセスストーリー」。
前回のサクセスストーリー第一部では、大国主命が数々の試練を乗り越え、須勢理毘売命(スセリビメノミコト)を正妻とし、出雲の国を造るまでをお話しました。
本日は、第二部に突入です!
前回、ご覧になられていない方は、是非、第一部もご覧になられて下さいね。

≪大国主命 サクセスストーリー 第一部≫

これから国造りに忙しくなるはずの大国主命…。
最初に結ばれた八上比売(ヤカミヒメ)とは、どうなってしまったのでしょうか?
それでは、第二部の始まりです!

最初の妻、八上比売は悲しい現実を知る

須勢理毘売命(スセリビメノミコト)と戻った大国主命は、須佐之男命(スサノオノミコト)から奪った太刀と弓で八十神たちを追い払い、出雲の国をお造りになられたのです。

最初に結ばれた八上比売(ヤカミヒメ)は、そのような事実は知る由もありませんでした。
皆さん、おぼえていますか?
因幡の素兎(因幡の白兎)のお話で出てきた八上比売(ヤカミヒメ)ですよ。

大国主命の子を、既に身ごもっていた八上比売(ヤカミヒメ)は、臨月が近づいてきた為、愛しの大国主命に会うために因幡の国から出雲の国に向かいます。

その長く険しい旅の途中、宍道湖を船で渡る際に山間に湯気が立ち昇るのを見つけ、そこに温泉があることを知るのです。
八上比売(ヤカミヒメ)は、この湯に浸かり、長旅の疲れを癒し、更に美人になられたと言われています。
この湯が日本三美人の湯の一つ、「湯の川温泉」です。

その後、出雲の国に到着すると、大国主命が須勢理毘売命(スセリビメノミコト)を正妻に迎えたという悲しい現実を知ることとなるのです。
八上比売(ヤカミヒメ)は、須勢理毘売命(スセリビメノミコト)の嫉妬深い性格を恐れ、大国主命のことを諦め、因幡の国に戻ることにします。

ところが、帰りの道中で産気づいてしまい出産してしまうのでした。
その御子は木の俣(また)にかけて置いていかれたそうです。
この御子は木俣神(キノマタノカミ)と呼ばれています。
大国主命を諦め、最愛の子まで手放した八上比売(ヤカミヒメ)は、帰りの道中、再び湯の川温泉に浸かり、傷ついた心と身体を癒したといいます。

(なんとも、かわいそうなお話です…。)

愛の歌「神語り(かむかたり)」で
絆は深まる

第2回のお話でも紹介しましたが、大国主命は多くの名前を持っており、八千矛(戈)神(ヤチホコノカミ)とも呼ばれています。
ここでは少しの間だけ、八千矛(戈)神(ヤチホコノカミ)という名で、お話をすすめていきます。

八千矛(戈)神(ヤチホコノカミ)は、日本列島のあちらこちらに出掛け、新たに妻にする女性を探しました。
その際に『高志国(こしのくに=越の国)』に沼河比売(ヌナカワヒメ)という、たいへん美しく賢い女性がいると聞き、求婚をしようと出向いていくのです。
高志国とは、現在の北陸地方のことをさします。

そして、八千矛(戈)神(ヤチホコノカミ)は、家の窓の外から中にいる沼河比売(ヌナカワヒメ)に向かって、恋の歌をよまれます。

「八千矛(やちほこ)の 神の命は 八島国(やしまぐに) 妻娶(つまま)きかねて 遠々(とほとほ)し 高志(こし)の国に 賢し女(め)を 有りと聞かして 
麗(くは)し女を 有りと聞こして さ呼ばひに 有り立たし 呼ばひに 有り通(かよ)はせ 太刀が緒も 末(いま)だ解かずて 襲衣(おすひ)をも 
末だ解かねば 嬢子(おとめ)の 寝すや板戸を 押そぶらひ 我が立たせれば 引こづらひ 我が立たせれば 青山に 鵼(ぬえ)は鳴きぬ さ野つ鳥 
雉(きぎし)は響(とよ)む 庭つ鳥 鶏(かけ)は鳴く 心痛(うれたく)も 鳴くなる鳥か 此(こ)の鳥も 打ち止めこせぬ いしたふや 天馳使(あまはせづかひ) 事の 語りごとも 此(こ)をば 」

簡単に訳すと、こんな感じです…。
【簡約】
『高志国にとても賢く、美しい女神がいると聞いてやってまいりました。戸が開かないので、戸を開けて欲しく、戸を押したり引いたりしながら待っているのですが、鳥が朝を告げて鳴き出してしまいました。私の心の痛みを知らないで鳴く鳥なんて、打ち殺して鳴くのを止めさせたい。』

これに対して沼河比売(ヌナカワヒメ)は、戸を開けることなく、二首の歌を返します。

「八千矛の 神の命 萎(ぬ)え草の 女(め)にしあれば 我が心 浦渚(うらす)の鳥ぞ 今こそば 我鳥(わどり)にあらめ 後は 汝鳥(などり)にあらむを 命は な殺(し)せたまひそ
いしたふや 天馳使(あまはせづかひ) 事の 語り言(ごと)も 此(こ)をば」

「青山に 日が隠らば ぬばたまの 夜は出でなむ 朝日の 笑み栄え来て 栲綱(たくづの)の 白き腕(ただむき) 沫雪(あわゆき)の 若やる胸を そ叩き
叩き愛(まな)がり 真玉手(またまで) 玉手差し枕(ま)き 股(もも)長に 寝(い)は宿(な)さむを あやに な恋ひ聞こし 八千矛の 神の命
事の 語り言も 此(こ)をば」

【簡約】
『八千矛神(ヤチホコノカミ)よ。私はしおれた草のような女です。私の心は、落ち着かずにフラフラ飛ぶ水鳥のようで、今は自分のことしか考えていない鳥…。でもいずれは、あなたのものになりましょう。ですから、どうぞ鳥を殺さないでください。』

『青々と生い茂った山に日が沈み、夜になりましたら朝日のような笑顔でおいでください。そして、その白い腕でそっと抱いて下さい。そのような わびしい恋などしないで下さい。
そう、むなみに恋い焦がれないでください。八千矛神(ヤチホコノカミ)よ。』

そして二人は、その夜は会うことなく、明くる日の夜に会い、結婚をしたのです。

このことを知った正妻の須勢理毘売命(スセリビメノミコト)は、ひどく嫉妬してしまいます。
八千矛神(ヤチホコノカミ)は、その嫉妬心に困ってしまい、出雲の国から大和の国に発とうと考えるのです。

(ホント、ギリシャ神話のゼウスとヘラのようです…)

いよいよ出発しようと、馬に鞍(くら)を掛け、鐙(あぶみ)に片足をかけた時に、八千矛神(ヤチホコノカミ)は歌います。

「ぬばたまの 黒き御衣(みけし)しを ま具(つ)ぶさに 取り装(よそ)ひ 沖つ鳥 胸見る時 はたたぎも 是(これ)は適(ふさ)はず 辺つ波 そに脱ぎ棄(う)て
鴗鳥(そにどり)の 青き御衣(みけし)を ま具(つ)ぶさに 取り装ひ 沖つ鳥 胸見るとき はたたぎも 是(こ)も適(ふさ)はず 辺つ波 そに脱ぎ棄(う)て
山県(やまがた)に蒔(ま)きし 茜㫪(あたねつ)き  染木(そめき)が汁に 染衣(しめごろも)を ま具(つ)ぶさに 取り装ひ 沖つ鳥 胸見るとき はたたぎも 是(こ)宜し
愛子(いとこ)やの 妹(いも)の命(みこと) 群鳥の 我が群れ去(い)なば 引け鳥の 我が引け去なば 泣かじとは 汝(な)は言ふとも 
やまとの 一本薄(ひともとすすき) 項傾(うなかぶ)し 汝が泣かさまく 朝雨の 霧(きり)に立たむぞ 若草の 妻の命 事の 語り言も 此(こ)をば 」

【簡約】
『ぬばたま(ヒオウギの種)のように黒い衣をていねいに着込んで、沖の水鳥が自分の胸を見る時、羽ばたくように手を動かしてみたが、袖を広げ胸元を見てみたが、これは似合わないので、波うちぎわに脱ぎ捨てよう。
カワセミのような青い衣をていねいに着込んで、沖の水鳥が自分の胸を見る時に、羽ばたくように手を動かしてみたが、これも似合わないので、波うちぎわに脱ぎ捨てよう。
山の畑に蒔いた茜の根をついて、その染め草の汁で染めた衣をていねいに着込んで、沖の水鳥が自分の胸を見る時に、羽ばたくように手を動かしてみたらこれは似合う。
愛しい妻よ。あなたは泣かないと言ってはいるが…。群れをなして飛んで行く鳥と一緒に私も遠くへ行けば、きっと山のふもとの一本のすすきのように、頭をうなだれて泣き、朝の雨が上がった霧の中に立ちすくんで悲しむのだろうか…。若草のように 若々しく美しいわが妻よ』

すると、須勢理毘売命(スセリビメノミコト)は、酒を入れた大きな酒杯をもって駆け寄り、つぎの歌を返します。

「八千矛(やちほこの)の  神に命(みこと)や  我が(あが)大国主  汝(な)こそは  男(お)にいませば  打ち廻(み)る
島の崎々 掻(か)き廻(み)る 磯の崎落ちず 若草の 妻持たせらめ 我(あ)はもよく 女(め)にしあれば 汝を除(き)て 男(お)は無し
汝を除(き)て 夫(つま)は無し 綾垣の ふはやが下に 蚕衾(むしぶすま) 和(にこ)やが下に 栲衾(たくぶすま)
騒(さや)ぐが下に 沫雪(あわゆき)の 若やる胸を 栲綱(たくづの) 白き腕(ただむき) そ叩き 叩き愛(まな)がり
真玉手(またまで) 玉手差し枕(ま)き 股長に 寝(い)をし寝(な)せ 豊御酒(とよみき) 奉(たてまつ)らせ」

【簡約】
『八千矛神(ヤチホコノカミ)よ。私の大国主よ。あなたは男ですから、あちこちに若草のように若く美しい妻をお持ちでしょう。でも私は女ですから、あなたのほかに夫はおりません。どうか柔らかな布団の下で、私の白い腕をそっと触って下さい。手を握って下さい。そして、足を伸ばしてくつろぎ、お酒をお召し上がり下さい。』

二人は酒を交わして誓いを結び、お互いの首に腕をかけて抱き合いました。

こうして今に至るまで出雲に鎮座することになるのです。
大国主命のおられる出雲大社御本殿と、須勢理毘売命(スセリビメノミコト)のおられる御向社は、今も仲良く隣で並び、寄り添っています。
これを知った上で、改めて夫婦で並んだ社を見ると、感慨深いものがあります。

このように愛の歌を詠み交わしたものを、「神語り(かむかたり)」と呼び、男女の問答歌の始まりだと言われています。

恋多きことは、国造りにつながる?!

恋多き、大国主命ですが…。
多くの女神と結婚し、181柱の子を儲けたと伝わり(『古事記』では180柱、『日本書紀』では181柱)、古事記、日本書紀、風土記や神社社伝などには多くの女神の名が記載されています。

古代日本では女神が統治する土地が多く、女神と結婚することはその土地を支配下に置くこと意味したようです。
そのために、大国主命は精力的に各地を巡ったともいわれています。
沼河比売(ヌナカワヒメ)との間には、建御名方神(たけみなかたのかみ)。
宗像三女神の次女の神屋楯比売命(かむやたてひめのみこと)との間には、事代主神(ことしろぬしのかみ)。
お二方とも、このあとの国譲りのお話で登場する、大国主命の子です。

須佐之男命の命で正妻となっていた須勢理毘売命(スセリビメノミコト)の心中は、きっと穏やかではなかったことでしょう…。
しかし、各地で多くの子を儲けたことで、大国主命の国は磐石となっていくわけです。
ある意味、国造りですね。

これから国造りで多忙を極めるかと思われた、大国主命のサクセスストーリー第二部でしたが…。
なんだか、ラブストーリーとなってしまいました。(笑)

次回で、いよいよ大国主命のサクセスストーリーも大詰めを迎えます。
ラブストーリーによって広がりを見せる国ですが、その一方では地道なる『国造り』が行われています。
果たして、どのようにして『国造り』が成し遂げられていくのか?
是非、そちらもご覧になられてくださいね…。

 

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