めのうさとえすこな散歩

古事記と出雲⑤ ~黄泉の國譚 出雲以外のイザナミ御陵 その1~

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みなさまこんにちは。
オンラインショップの朝倉です。
ブログを更新しました。
しばしお付き合いください。

 

さてさて。
前回で出雲地方の黄泉の國譚は
終わりなのですが

出雲以外のイザナミ♀のお墓の
ご紹介をさせて頂きたいと思います。

本当は、他所と出雲との
対比を一つの回に載せようと
考えていたのですが
出雲以外の土地も中々に興味深く、
簡単に済ませるには
もったいなくなってしまいました。
どうかお付き合いください。

まずは広島県庄原市の比婆山を。

山頂に御陵(お墓)があるのですが
比婆山の北側の竜王山の麓に
遥拝所の神社があります。
登山しなくとも参拝出来るわけです。

その神社が熊野神社。
広島県庄原市西城町熊野。


杉の巨木が鬱蒼と生い茂り
奥まった場所の意味の
「隈々しい」に相応しい
「熊野」の社名が
似合う神社です。

社額の朱塗りが御陵の
意味を持つように思えて
仕方ありません。
「赤」は死に関わる神社の
共通性でしょうか?

斜めに長い幣殿を潜ろうとすると、
なんと湧き水が湧いていました。


これから滝を見に、
山に入ろうとしていましたので
喉を潤しておきます。

本殿の左手には鳥居があり、
その先には摂社・末社が点在しています。

先に進むと摂社が続きます。
磐座(いわくら→巨石)の前のお社には
カナヤマビコがいらっしゃるようです。

元々はこの巨石の場所が
祈りの場だったようで

この磐座の上にお社があったようです。
祭祀の場所が変わったのでしょうね。

カナヤマビコが鉱山や製銅・製鉄の神様と
いわれるようになったのは
明治以降の様です。

国学者の本居宣長はカナヤマビコ
(金山毘古)を
「病の苦しみの神」
と本に記しています。
この磐座は火傷で苦しみながら命を落とした
イザナミ♀を弔うための
祈りの場所ではないでしょうか。

二宮神社。

二宮神社のご祭神はハヤタマノヲ。
建物はお社というより仏閣の感じです。


三宮神社。ご祭神はヨモツコトサカノヲ。

ハヤタマノヲとヨモツコトサカヲは
日本書紀に登場する神様。
その場面は中々に解りにくい内容で、
ネットでもかなり意訳に
富んでいる説明もあるようです。
ただ言えるのは、
イザナミの死に関わる神社には

この二神が揃って
いらっしゃることが多いようです。

二宮の社額も赤に色が付けてありました。

さらに山に入って行くとお目当ての滝です。

鳥尾の滝(那智の滝)とあり、
「鳥尾」はスサノヲが降臨した場所、
奥出雲にある
「鳥髪(鳥上)」に
対応しているようです。

落差30mのこの滝。
滝の水で体を洗うと美肌になるそうです。

また滝の傍らの洞穴には
観音様がいらっしゃいました。


滝より更に上には天狗伝承の地があり、
修験の名残を感じます。

それにしても落ち着く滝で
ちょっと長居したくなる場所でした。

一旦、神社に戻り
車で比婆山の登山口へ向かいます。
最終目的地にはまだまだ。
また山を登る予定なのです。

熊野神社から車で8㎞ちょっと。
立烏帽子山駐車場にきました。
ここから比婆山の頂上を目指します。
この日は猛暑日で、37℃くらいまで
気温が上がったようですが、山の上は
そこまでは気温が高くは無く、
駐車場には車が6台ほど停めてありました。

なだらかな登山道を進み山頂を目指します。

途中、声を上げてしまいました。
巨石です!

それほど大きく見えませんかね?
実はこの岩、奥行きがあります。
奥まで行ってみて私と比べるとこんな大きさ。

これは「千引岩」と看板がありました。
神話ではイザナキ♂
黄泉の入口を塞いだ岩です。


途中三叉路がありました。
「越原越」。
「おっぱらごえ」と読むようです。
イザナミ♀が差し向けた黄泉の軍団を
イザナキ♂が「追っ払った」場所
が由来だとか。

ようやく山頂へ。
参拝の為の賽銭箱があります。
そしてその後ろにはチェーンが張られ
真ん中に注連縄が施された
磐座が鎮座しています。

イザナミ♀御陵です。

山頂からちょっと離れた場所に
「命神社」があります。

祭祀はこちらで斎行されるようですね。

比婆山から更に隣の山、
烏帽子山に縦走します。

烏帽子山には奇妙な岩があります。

条溝石(じょうこうせき)。

巨石の天板に人為的に溝が掘られています。
イザナミの御陵と何かしら関わりが
あるのではといわれていますが
はっきりと解っていないのだとか。

ですが、この真ん中の溝は先程までいた
比婆山の山頂を指しているように見えます。

アプリに方位磁針を落としているので
調べてみました。
ほぼ正確に南北に溝が掘られています。

不思議ですね(^^;)。
でも何のために?

古事記ではイザナミ♀の御陵は
「出雲国と伯耆国の境」
とありますが、
こは出雲の国と備後の国の境。
ここにイザナミ♀の御陵があるのは
何か他の理由があるように感じます。
今回はそんな話を書かせてください。

古事記に於いて
イザナミの御陵に
関わるキーワード「比婆山」。

私の持論なんですが、この「比婆」は
「火場」ではないでしょうか?
何のための「火場」かといえば
たたらに関する火ではないかと。

イザナミは命を賭してでも火の神を
産む必要があったハズです。
生活に欠かせないものであり

火を使い精製される金属道具の発達により
当時、著しい生活の進歩があったからです。

安来市の比婆山、庄原市の比婆山・・・
比婆山は
たたらに関する山と考え、
その山には
イザナミ♀を弔う施設があった
と考えればどうでしょう?

島根県・鳥取県・広島県にまたがる
比婆山信仰圏が出来上がります。過去の
黄泉の国譚で紹介させていただいた
場所と
今回の庄原市の比婆山も入る地域です。

火で命を落としたイザナミ♀
火の恩恵の感謝を、
そして弔いの祭祀の場所を設けた。
いわば「黄泉の国の遥拝所」なのでは。
今回、実際に足を運んで
私の脳裏に思い浮かんだ結論です。

古事記を元に紹介してきましたが
視点を変えて日本書紀ではどうでしょう?

次回は古事記から離れ
日本書紀にまつわるイザナミ♀
お話をさせていただきます。

タイトルは「古事記と出雲」。
次回は当てはまらないかもしれませんが
そこはご愛嬌で(^^;)

本日もお付き合いくださって
ありがとうございます。
本日はこの辺で。
またの機会に。
ご自愛くださいますように。

 

過去のブログは下記からどうぞ。

古事記と出雲① ~黄泉の国譚 比婆山その1~

古事記と出雲② ~黄泉の国譚 比婆山その2~

古事記と出雲③ ~黄泉の國譚 黄泉比良坂~

古事記と出雲④ ~黄泉の國譚 黄泉の穴~

 

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