旧暦10月となりました。
神々のお集まりになられる地『出雲地方』より、こんにちは。
オンラインショップ担当の畑です。
神在月を迎えるにあたり、大人気のパワースポットでもある出雲大社を中心に、神事の行われる日程や参拝方法、故事・由来などのお話を複数回にわたり紹介する企画…。
前回は多くの方が、もっとも足を運ばれる機会が多いであろう、出雲大社の神在月の神事を紹介させていただきました。
≪神在月|『縁結び』の地、出雲に八百万の神々が集まる! 第1回「出雲大社 神在祭」≫
第2回となる本日は、一年を通して、そして神在月と呼ばれるこの時期になると特に多くの観光客で溢れる出雲大社の御祭神であられる『大国主大神』についてのお話をお届けします。
一体どのような神様なのでしょうか?…。
生い立ちや国造りを行い、国譲りをするまでの偉業や道程を、神話など通してお伝えしていきます。
出雲大社の御祭神『大国主大神』は『須佐之男命(スサノオノミコト)』の子孫
『大国主大神』という神様は、ひとことで言うと、「日本の国造りをし、その礎を築いた国津神の主宰神」となります。
ヤマタノオロチを退治した須佐之男命(スサノオノミコト)と並び、「古事記」「日本書紀」の神話に登場する代表的な神様となります。
この「古事記」「日本書紀」では、呼び名や設定も若干、変わってきます。
「古事記」では須佐之男命(スサノオノミコト)の六代後の子孫とされていますが、「日本書紀」になると、須佐之男命(スサノオノミコト)の子ともされています。
そして多くの名前で呼ばれています。
代表的なものを、下記の表にまとめましたが、この他にもあります。
『大国主大神』そのご利益は?
神様というだけにご利益があるわけですが、一体どんなご利益があるのでしょうか?
皆さんもご存知の通り、縁結びの神様として有名です。
これだけ多くの名前を持たれているわけですから、きっと多くのご利益があるのではないか?と思いますよね。
名前を多く持つ『大国主大神』は御神格も多く、そのご利益もたくさんお持ちであると言われています。
こちらも表にまとめてみました。
なぜこれほどまでに多くの名前をお持ちであったのか?
それは国造りをする上でも、色々と多くのお役目を果されていたからだと考えられています。
例えば大穴というのは鉱山と考えられ、たくさんの鉄器や銅器を造るための鉱山をたくさん所有していたことが伺えます。
また、八千矛(戈)神というのは沢山の矛を所有していた事だとすれば、矛は王族の証でもあり、それだけ多くの国を統治していたとも考えられます。
アメノシタツクラシシオオカミとあるのも、国造りをなさった事にちなんでいると考えられています。
これらのことからも、神様は名前が多くあるほど、色々なことを成し遂げられた尊い神であるといえるのでしょうね…。
大国主命(オオクニヌシノミコト)の偉業① 『国造り』
では、『大国主大神』こと大国主命(オオクニヌシノミコト)は、どうのようなことを成し遂げられてこられたのでしょうか?
大きな偉業として取り上げられるのが国造りです。
大国主命(オオクニヌシノミコト)は葦原中国(あしはらのなかつくに)、今の日本の国造りをします。
国土を開拓し、農業、商業や医療などを普及させていきます。
国造りをしていく中で大国主命の前に、神産巣日神(カミムスビノカミ) という神様の息子の少彦名命(スクナビコナノミコト)が現れます。
少彦名命(スクナビコナノミコト)は、神話では天之羅摩船(アメノカガミフネ)という植物の実のお舟でやって来るという、とても体の小さな神様です。
室町時代にできた御伽草子にある、一寸法師のモデルはこの小さな神様『少彦名命(スクナビコナノミコト)』だとされています。
少彦名命(スクナビコナノミコト)は、医薬、おまじない、酒造に通じ、穀物も各地に伝える等、様々な角度から大国主命のサポートをし、二人は力を合わせて国造りをすすめていくのです。
しかし、国造りの途中で少彦名命(スクナビコナノミコト)は常世国という海の向こうの国に行ってしまいます。
突然、パートナーを失い、これからの国造りはどうしたものか?…
大国主命が途方にくれていると、海の向こうから光り輝く神が現れ、「私を大和国の三輪山に祀れば国造りに協力しましょう。」と言うのです。
大国主命が「誰か?」と問うと、「我は汝の幸魂(さちみたま)奇魂(くしみたま)なり」と答えたといいます。
それは、大国主命自身の魂の声だったとも言われています。
こうして大国主はもう一人の自分と共に再び国造りを進め、成し遂げるのです。
幸魂(さちみたま)奇魂(くしみたま)
出雲大社の祝詞の最後に「奇魂(くしみたま)幸魂(さちみたま)守給(まもりたまえ)幸給(さきわへたまえ)」と唱えられます。
この詞は大国主命が伝えられた言葉とされています。
神の姿には荒々しい魂である荒魂(あらみたま)と、恵みをもたらす和魂(にぎみたま)があります。
(なんだか人間みたいですね…)
恵みをもたらす和魂(にぎみたま)は、さらに幸魂(さきみたま)と奇魂(くしみたま)に分けられます。
幸魂は人に幸を与え、収穫をもたらし、奇魂は奇跡によって幸を与えるとされています。
大国主命は、国造りの半ばで少彦名命を失い、困難に直面した際に「幸魂奇魂」の存在を知ることとなります。
そして自分自身の中に潜む「幸魂奇魂」の霊力により、国造りの偉業を成し遂げ、「縁結びの神」になられたというわけなのですね。
大国主命(オオクニヌシノミコト)の偉業② 『国譲り』
大国主命は、今の日本となる葦原中国(あしはらのなかつくに)を国として成長させました。
その様子を天津神(高天原の神々)が住んでいるとされる高天原(たかまがはら)という、天上界より見下ろす神がいました。
高天原(たかまがはら)の主宰神である天照大御神(アマテラスオオミカミ)です。
天照大御神(アマテラスオオミカミ)は、大国主命が造り上げた葦原中国(あしはらのなかつくに)を見て、「あの豊かな実りのある葦原中国こそ、わたしの子孫が治める国にふさわしい。」と言って、大国主命の元へ次々と神を遣わし、国を譲るように言うのです。
すぐに国譲りをするという決断にはならなかったのですが、最終的に天照大御神(アマテラスオオミカミ)への国譲りをすることとなります。
その際に大国主命は、「国を譲る代わりに私の住居として、大きく立派な御殿を建てていただきたい。自分の子供たちは、事代主神が率先して天津神(あまつかみ)の子孫に仕えるのであれば、それに従わない者はいないでしょう。」と言ったといわれています。
そこで建てられた御殿が、出雲大社の起源となっております。
それに対して天照大御神(アマテラスオオミカミ)は、「これから後は、この世の目に見える世界の政治は私の子孫があたることとしますが、あなたは目に見えない世界『幽冥(かくりごと)』を司り、「むすび」の御霊力によって人々の幸福を導いて下さい。」と答えるのです。
大国主命が目に見えない世界『幽冥(かくりごと)』の主宰であることから、八百万の神々は大国主命の住む出雲の地に集まり、人のご縁だけでなく、お金や仕事の事など、世の中のありとあらゆるご縁を『神議り(かみはかり)』によって決められることとなったといわれています。
『国譲り』によって、天空の神殿はできた?!
国造りという偉業を成し遂げ、そして平和的にその国を明け渡す「国譲り」をされた大国主命(オオクニヌシノミコト)の功績に、天照大御神(アマテラスオオミカミ)は喜び称え、自身の神殿と同じように、柱は高く太い木を用いて建てられたといわれています。
実際のところ、出雲大社がいつから存在しているのかは判明していませんが、現在の本殿は1744年に8丈(約24m)もの高さで建てられたものとなっています。
712年奈良時代に編纂された日本最古の公的書物である『古事記』にも記述が残っていることからも、少なくとも1300年以上も前には存在していたと考えられます。
また、平安時代には16丈(約48m)、それより前の太古の昔は現在の本殿の4倍もの高さを誇り、32丈(約96m)の高さからなる高層神殿であったとも言い伝えられています。
平成12年(2000年)には、出雲大社境内から13世紀前半と推定される三本柱が出土したことにより、古代の出雲大社は高層神殿であったという説の信憑性が高まっております。
出雲大社高層神殿の説については、人気のフリーライター『夏生さえり』さんの記事でも紹介されています。
是非、ご覧になられて下さいね。
≪出雲大社は巨大神殿だった…? 縁結びと言われる理由とその歴史は|夏生さえりさん×笹生衛國學院大学教授≫
『国造り』『国譲り』という偉業を成し遂げられた大国主命ですが、一方では恋多き神様として伝えられています。
多くの女性を妻とし、子供が180柱(181柱という説もある)もいることからも、『縁結びの神様』と呼ばれるようになったとも…。
目に見えない世界の主宰であることだけが由来となっているのではないようですね。
次回の【神在月|『縁結び』の地、出雲に八百万の神々が集まる!】は、そんな恋多き大国主命が様々な試練を乗り越え、『国造り』『国譲り』という偉業を成し遂げていく神話、サクセスストーリーを紹介します。
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