旧暦10月になると、神々がお集まりになられる地『出雲地方』より、こんにちは。
オンラインショップ担当の畑です。
大人気のパワースポットでもある出雲大社を中心に、神在月に行われる神事の日程や参拝方法、故事・由来などのお話を複数回にわたり紹介する企画…。
第1回では出雲大社での神在祭の紹介を…
第2回では出雲大社の御祭神であられる『大国主大神』は、一体どんな神様なのか?
第3回から第6回までは、『大国主大神(大国主命)』が歩まれた道程をサクセスストーリーとして4回にわたりお届けしてきました。
なぜ全国の神様は出雲大社にお集まりになられるか?もお伝えしてきましたが、この度は神々が出雲大社を去られたあと、一体どこに向かわれるのか?についてお話していきたいと思います。
少し長めの記事となっておりますので、前半と後半に分けてお話しさせていただきます。
前半から見えてくる疑問点もでてくるので、是非、後半もご覧になられて下さい。
これまでの記事で紹介させていただいた用語も出てきますので復習の為に、はじめに用語一覧表をつけておきますので、思い出して下さいね。
出雲地方には神在月になると、多くの神社で神在祭が執り行われ、八百万の神々をお迎えになられます。
そこから神々の足取りを辿っていきましょう…。
『朝山神社』神々は出雲大社よりも先に
別の場所で集まっていた!!
八百万の神々は、まず島根県飯南町に位置する琴引山を目指し降臨されるといわれています。
この琴引山は、霊験あらたかな名峰で大国主命が弾いたとされる御琴が眠るという言い伝えや、古来より弥山(みせん)と呼ばれ、信仰を集めていたことから重要な山であったことが分かります。
そして、この山頂付近にあるのが琴引山神社で、御祭神は大国主命と伊邪那美命(イザナミノミコト)です。
琴引山を目印に降臨されると、この山に源流を持つ神戸川(かんどがわ)を下り、その途中にある宇比多伎山の山頂にある朝山神社にお集まりになられるのです。
そして、この朝山神社には10日間滞在をされるのです。
一般的には、神在祭となると出雲大社が有名になるのですが、なんと、八百万の神々は出雲大社に行かれるよりも先に朝山神社にお立ち寄りになられているのです。
出雲大社に滞在される際は、境内にある十九社にお泊りになられるのですが、この朝山神社にも十九社があるのです。
八百万の神々は、ここでは出雲大社滞在中の時のように、神議り(かみはかり)のようなお仕事があるわけではないので、ゆっくりされるわけです。
お休みですね…。
(10連休…。羨ましいです…。)
出雲大社よりも早く、誰よりも早く、全国の神様たちにお会いすることができる場所ですね。
出雲大社での神議り(かみはかり)が始まる前に、事前にお願いをしておくなんてことも…。
朝山神社 神在祭の祭事
神在祭 旧暦 10月1日~10日
神迎祭 旧暦 10月1日
神送祭 旧暦 10月10日
『出雲大社』神様御一行は
川から日本海へ…
八百万の神々は朝山神社をお立ちになると、いよいよ出雲大社に向かうために再度、神戸川(かんどがわ)を下り、そのまま一度、日本海に出られるのです。
そこで日本海からお上がりになられるのが「稲佐の浜」なのです。
「稲佐の浜」にお上がりになられると、そこから陸路で出雲大社に向かわれます。
出雲大社での滞在期間は1週間です。
出雲大社 神在祭の祭事
旧暦10月10日 神迎神事・神迎祭
旧暦10月11日 神在祭
旧暦10月15日 神在祭・縁結大祭
旧暦10月17日 神在祭・縁結大祭・神等去出祭
旧暦10月26日 第二神等去出祭
出雲大社の神事に関しては、別記事にて「稲佐の浜」での神迎え神事や、神々をお見送りする神等去出祭(からさでさい)など紹介しています。
こちらもご覧になられて下さい。
≪出雲大社 神迎え神事・神迎祭≫
≪出雲大社 神等去出祭≫
≪出雲大社 神在祭≫
『佐太神社』神々は揃って
母神のお墓参りに…
朝山神社、出雲大社とまわられた後に神々が訪れる場所はというと、諸説はありますが、その中でも多く語られているものでいくと、佐太神社となります。
佐太神社は古来より出雲国二ノ宮とされ、出雲大社・熊野大社とともに出雲国三大社のひとつとして、出雲国における重要な地位を占めてきました。
佐太大神(サダノオオカミ)、伊邪那岐命(イザナギノミコト)、伊邪那美命(イザナミノミコト)を祀る中央の正殿をはさんで、向かって右側には天照大御神(アマテラスオオミカミ)を祀る北殿が、左側には素戔嗚尊(スサノオノミコト)を祀る南殿の三殿が並びます。
いずれも大社造りとなっていて、三殿が並立するご本殿は神社建築としても大変珍しく、国の重要文化財に指定されています。
この佐太神社には八百万の神々の母神であられる伊邪那美命(イザナミノミコト)のお墓があります。
八百万の神々は、お墓参りに来るいうわけですね…。
また、母神である伊邪那美命(イザナミノミコト)は、旧暦の10月に亡くなったという説もあることから、毎年この時期に八百万の神々が母神を偲んで訪れるとも言われています。
明治時代以前は旧暦の10月18日から25日の約一週間の期間で神在神事を執り行っていたようですが、こちらでは現在、新暦の11月20日から25日の期間で執り行われています。
佐太神社 神在祭の祭事
11月20日 神迎神事
11月25日 神等去出神事
『万九千神社』神々は飲んで笑って
大いに盛り上がる
出雲大社や佐太神社をまわれた後、最後にお集まりになられるのが万九千神社と言われています。
この万九千神社では、引き続き「神議り(かみはかり)」が行われ、ここで締め括られます。
神々が「神議り(かみはかり)」を終え、旧暦10月26日の夕刻に奉納されるのが、宮司家伝来の神楽を伴った「湯立神事」です。
神々がお立ちになられる前に、全てのモノ、コトを清々しく祓い清め、八百万神の御神威が栄えることを祈るのです。
そして、宮司が「お立ち」と唱えながら戸を梅の小枝で叩き、旅立ちの時が近づいたことをお伝えする神等去出神事が執り行われるのです。
その晩、神々は直会(なおらい)を催し、大いに飲んで笑って盛り上がるのだそうです。
打ち上げですね…。
このことからも万九千神社は、「直会(なおらい)の宮」とも呼ばれ、神々をおもてなしする神社ともなっています。
そして、未明には打ち上げを終えると、明くる年の再会を期して、八百万の神々はそれぞれの鎮座される地にお戻りになられるのです。
神々がお立ちになられる時、出雲地方は決まって暴風雨が吹き荒れると言われています。
万九千神社のある地域は「神立(かんだち)」という地名になります。
この地名からも、古来より人々は神々が立ち去っていく様子を静かに見守ったであろうことが窺えたりもしますね…。
また、近くを流れる「斐伊川」に架かる2本の橋には、「神立橋」「からさで大橋」と名付けられています。
万九千神社 神在祭の祭事
神在祭 旧暦 10月17日~26日
旧暦 10月17日 龍神祭(神迎え祭)
旧暦 10月26日 大祭・湯立神事・神等去出祭
一般的に多く見聞きするのは、ここまでお話したような順番となります。
① 朝山神社
集合、「神議り」前の休息、旅の疲れを癒す
② 出雲大社
「神議り」
③ 佐太神社
母神「伊邪那美命(イザナミノミコト)」のお墓参り
④ 万九千神社
「神議り」の継続、直会(なおらい)
「神在祭=お忌さん」は
時代と共に変化した
出雲地方では神在祭は「お忌さん(おいみさん)」と呼ばれ、期間中は歌舞音曲、喧騒、造作等も慎む禁忌の祭りともされてきました。
時代を遡ると、旧暦10月11日から25日までの15日間という長い期間で行われていたようで、11日から17日までを上忌、18日から25日までが下忌とされていました。
下忌の方がより重儀とされ、18日に神迎神事が行われると、境内には注連縄(しめなわ)が引き渡され、25日の神等去出(からさで)神事が終わるまでは謹慎斎戒に服したと言われています。
謹慎斎戒とは飲食や行動を慎み、心身を清め、穢れを取ることを意味しています。
『神在祭(お忌さん)』は、厳重な忌の祭りであったということもあり、時代とともに中根(なかね)と呼ばれる緩和日が3日間設けられると、その間は斎戒が解かれたようです。
そして今では、出雲大社では上忌が残り、佐太神社には下忌が残ったのです。
このことから八百万の神々は、出雲大社にお立ち寄りになられたあと、佐太神社に訪れるのだと言われるようになったとか…。
しかしながら、これは後付のストーリーであるという見方も、一方ではあるようです。
では、もう一方の見方として考えられることについて、後半でお話したいと思います。
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