八百万の神々が出雲大社をお立ちになられたあと、どこの神社を巡られるのか?
一般的に見聞きする機会の多いものを、前半ではご紹介させていただきました。
しかしながら一方では、これに関しては後から付けられたストーリーだという見方もあるようです。
では、神々はどのルートで各神社を巡られるのか?について、また別の見方も出来ることから、後半となるこちらでは、その別の見方のお話をさせていただきます。
前半をご覧になられていない方は、是非、前半からご覧になられて下さい。
八百万の神々の目的は
出雲と松江では違う?…
出雲地方では、この他にも神在祭が執り行われる神社があるので、この記事の後半で紹介させていただきますが、ここであらためて分かったことをお話したいと思います。
神在祭は「お忌さん(おいみさん)」と呼ばれ、かつては期間も15日間と非常に長いもので上忌、下忌とがあったと紹介させていただきました。
そして、時代とともに出雲大社では上忌が残り、佐太神社には下忌が残ったと…。
ここで考えられることは、出雲地方に伝わる神在祭は出雲と松江に分けられ、八百万の神々の巡られるルートも、その土地で違うのではないか?ということです。
八百万の神々は、出雲大社をお立ちになられた後、佐太神社に向かい、万九千神社で直会(なおらい)を催し、それを終えるとそれぞれの鎮座される地に帰られるという説を、よく目にするのですが…。
各神社の神在祭の日程や、様々な資料を見ていると出雲と松江では神在祭のあり方が違っているようにも思われます。
かつて、出雲地方の社領は出雲大社(出雲)と佐太神社(松江)が二分していたとも言われていたことからも、このことが窺われます。
出雲には「神議り(かみはかり)」の為に、松江には八百万の神々の母神であられる伊邪那美命(イザナミノミコト)のお墓参りの為にと、目的も違っているようですね。
これらのことを踏まえて考えると、八百万の神々の足取りも、出雲大社ルートと佐太神社ルートとに分けられ、別のものであるという見方も…。
そうすると、神在祭が行われる他の神社の日程や、旧暦と新暦で行っている違いなどにも合点がいきます。
これらの事を踏まえて、神在祭が行われる他の神社を紹介します。
日御碕神社(出雲市大社町)
島根半島の西端に位置する日御碕。
その岬に鎮座する日御碕神社には、天照大御神(アマテラスオオミカミ)を祀る下の宮「日沈宮(ひしずみのみや)」と、素戔嗚尊(スサノオノミコト)を祀る上の宮「神の宮」という上下二宮があります。
両宮を総称して「日御碕神社」となります。
昼を司る伊勢神宮に対して、夜を司るのが日御碕神社となります。
現在の社殿は、江戸時代に三代将軍家光の命によって江戸から工匠が派遣され、10年の歳月をかけて造られました。
出雲地方では珍しい権現造となっており、極彩色が際立つ社殿は、いかに徳川の威信をかけて造られたかを物語っています。
天照大神(アマテラスオオミカミ)を祀る「日沈宮(ひしずみのみや)」の妻部分にある、「天照大御神(アマテラスオオミカミ)」「月読命(ツクヨミノミコト)」「素戔嗚尊(スサノオノミコト)」の姉弟三神のシンボルを表す「太陽」「星」「月」の彫刻は必見です。
太陽は、天照大御神(アマテラスオオミカミ)
星は、素戔嗚尊(スサノオノミコト)
月は、月読命(ツクヨミノミコト)を表しているとのこと。
他にも竜虎、鶴亀、松竹梅、三猿といった見事な彫刻も見所となっています。
また、ここには「砂守り」と呼ばれる、最強の厄除けと伝わる御守りがあるとかで、社務所に立ち寄れば手に入れることができるとか…。
日御碕神社 神在祭の祭事
神在祭 旧暦 10月11日~17日
旧暦 10月11日 神迎祭
旧暦 10月14日 龍神祭
旧暦 10月17日 神等去出祭
熊野大社(松江市八雲町)
733年に編纂された出雲国風土記にも登場する、出雲国一之宮として、出雲大社と並び称される古社で、「熊野大神(素戔嗚尊・スサノオノミコト)」をお祀りし、火の発祥の神社として別名「日本火出初之社」と信仰伝承されるように、「火=霊(ひ)=神」と崇め、人々を平和と繁栄、豊穣に導く大神として、古くから出雲大社と並んで崇敬されてきた神社です。
出雲大社の祭祀は、ここで斎火(いみび)をいただかないと執り行えない決まりとなっています。
また、出雲国造家の代替わりの際は、何よりも先にまず熊野大社に赴き、鑽火殿(さんかでん)に一晩籠もって火継式(神火相続式)を行わなければならないのです。
熊野大神(素戔嗚尊・スサノオノミコト)の許しを得ることで、新しく出雲の国造となれるわけです。
まさに出雲国の一之宮です。
熊野大社 神在祭の祭事
神在祭 旧暦 10月11日~26日
旧暦 10月11日 神在祭
旧暦 10月26日 神等去出祭
神魂神社(松江市大庭町)
「神魂」と書いて「かもす」と読み、通称「大庭(おおば)の大宮さん」や「神魂大社」とも呼ばれています。
伊邪那美命(イザナミノミコト)を御祭神とし、本殿は出雲大社よりも古い様式を残す高床式で、現存する大社造の社殿の中でも最も古いといわれ、国宝に指定されています。
宇豆柱がかなり飛び出しているところも特徴となっています。
また、芸術家の岡本太郎が「石の選び方、組み方、何か分厚で、彫が深い」と感嘆し、「出雲地方の美意識の伝統が、そこにコンデンスされている感じである」と言われた石段も見どころです。
佐太神社の神在祭直前の11月11日~18日が神魂神社の神在祭です。
神魂神社 神在祭の祭事
神在祭 11月11日~18日
11月11日 神在祭(神迎え)
11月18日 神等去出祭
多賀神社(松江市朝酌町)
松江市を流れる大橋川のほとりに鎮座する古社で、御祭神は素戔嗚尊(スサノオノミコト)です。
川の淵に立つ鳥居は見所となっています。
ここでは、八百万の神々が佐太神社をお立ちになられた後、多賀神社に移動され、神社の裏手にある魚見山(古墳)に登って、恵比寿神(エビス)が魚釣りをしているのを見物するのだと言われています。
この恵比寿神は事代主命(コトシロヌシノミコト)とも言われていますが、この事代主命が神饌(しんせん)に使う魚を獲るために、猿田彦命(サルタヒコノミコト)が操る船に乗って漁場まで出るのだとか…。
夜には、ここで直会(なおらい)が催され、参道にしめ縄が張られると、境内には誰も入れなくなります。
また、見所は本殿のお社にもあり、全国的にも珍しい「神面」が掲げられているのです。
この「神面」は、御祭神である素戔嗚尊(スサノオノミコト)をはじめ、伊邪那岐命(イザナギノミコト)、伊邪那美命(イザナミノミコト)、宇津名媛命(ウズナヒメノミコト)、事代主命(コトシロヌシノミコト)、大己貴神(オオナムチ)の六柱の神々を表していると言われています。
多賀神社 神在祭の祭事
神在祭 11月25日~26日
10月25日 神在祭
10月26日 神等去出祭
売豆紀神社(松江市雑賀町)
売豆紀と書いて「めづき」「めつき」と読みます。
御祭神は下照比売命(シタテルヒメノミコト)です。
下照比売命(シタテルヒメノミコト)は、大国主命の第三の姫神で、葦原中国平定のために高天原から遣わされた天若日子と結婚をしたと伝わります。
そして、父である大国主命の国土経営をたすけ、偉大な功績をたてられた他にも、和歌の祖神として崇められています。
その姿は、光り輝くほど美しいといわれる女神様であったとか…。
そのこともあってか、ここにも八百万の神々がお立ち寄りになられ、直会(なおらい)と申しますか…。
そのぉ…、あれです…。
美女神との遊興(ゆうきょう)の為にお立ち寄りになられるのだとか…。
御祭神である美女神、下照比売命(シタテルヒメノミコト)をはじめ、出雲地方の美女神たちからの接待を受けるのだそうです。
7日間も美女神たちから接待を受けるわけですから、それはもう夢のような…。
(骨抜きにされちゃいますね…。笑)
売豆紀神社 神在祭の祭事
神在祭 12月3日~9日
12月3日 神迎え
12月9日 神送り(神等去出祭)
古来より伝わる神在祭は、時代と共に変化していったということも分かったような気がします。
目的は違えども、出雲の地に八百万の神々がお集まりになられるわけです。
この八百万の神々の足跡をたどってみるのも、良いご縁をいただくきっかけになるかもしれませんね…。
次回は今や有名になり、出雲大社参拝には欠かすことの出来ない、話題の「出雲大社」の砂の入手方法と、その砂をどのように使用するのか?についてお話したいと思います。
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