神々のお集まりになられる地『出雲地方』より、こんにちは。
オンラインショップ担当の畑です。
旧暦の10月になると、全国の神様(八百万の神々)が出雲の地にお集まりになられます。
八百万の神々は、まず島根県飯南町に位置する琴引山を目指し降臨されるといわれています。
この琴引山は、霊験あらたかな名峰で大国主命が弾いたとされる御琴が眠るという言い伝えや、古来より弥山(みせん)と呼ばれ、信仰を集めていたことから重要な山であったことが分かります。
そして、この山頂付近にあるのが琴引山神社で、御祭神は大国主命と伊邪那美命(イザナミノミコト)です。
八百万の神々はこの琴引山を目印に降臨すると、この山に源流を持つ神戸川(かんどがわ)を下り、その途中にある宇比多伎山の山頂にある朝山神社にお集まりになられます。
ここに10日間滞在されると、再度、神戸川(かんどがわ)を下り、そのまま一度、日本海に出られるのです。
そこで日本海からお上がりになられるのが『稲佐の浜』であると言われています。
出雲大社では、この稲佐の浜で旧暦の10月10日になると神迎え神事を行い、八百万の神々をお迎えすると、出雲大社神楽殿にお招きし神迎祭が執り行われます。
というわけで、2019年は旧暦10月10日となる11月6日(水)に稲佐の浜で行われた神迎え神事と神迎祭に参列するため、スタッフ数名とともに行ってまいりましたので、本日はその様子をお伝えしたいと思います。
神迎え神事 稲佐の浜
稲佐の浜での神事が始まるのが19時。
出雲大社前の神門通りに到着したのが、日は既に沈んだ17時半頃で、これからこの地に神々をお迎えするという凛とした空気が周辺に漂っているのを感じずにはいられませんでした。
暗闇の中、『神迎の道(かみむかえのみち)』と呼ばれる、民家の間を通り稲佐の浜まで続く道をすすみ斎場を目指しました。
この神迎の道(かみむかえのみち)には紙垂(しで)が渡され、神々をお招きする神聖な道であるのが伝わってきます。
そして、多くの人が静かに稲佐の浜を目指して歩いていく中で、これから全国の神様をお迎えするのだという緊張感は更に高まります。
距離にして約1km、歩くこと約15分くらいであったでしょうか…。
斎場に到着すると、神事の始まる1時間前ではありましたが、御神火は焚かれており、既に多くの人で溢れていました。
群衆に驚きながらも、稲佐の浜の入口にくると「神迎御幣(かみむかえごへい)」を頂くことができました。
御幣は神事で使用される際の道具の1つで、白い紙を折り合わせて編んだものを木に挟んだものです。
この「神迎御幣」を手に持って、上陸された神々と神職の方々と共に、お供して出雲大社を目指すわけです。
19時となり、これまで辺りを照らしていた照明も全て消され、暗闇の中に見えるのは御神火だけという、なんとも神秘的な光景となりました。
そして静寂に包まれた中で、いよいよ神迎え神事が始まりました。
祭壇には神々が宿られる神籬(ひもろぎ)が2本と、その傍らには神々を先導していらっしゃる龍蛇神様が奉納されています。
そして、神職によってご祈祷と祝詞が奏上されました。
こうして、八百万の神々の御霊が、2本の神籬(ひもろぎ)にお宿りになられると稲佐の浜での神事が終了します。
八百万の神々は神迎の道を進み、出雲大社へ
八百万の神々の御霊がお宿りになられた2本の神籬(ひもろぎ)は白い絹の布(絹垣)で覆われ、龍蛇神様の先導で神迎の道(かみむかえのみち)を進み、勢溜の鳥居から出雲大社の神楽殿へ向かいます。
このとき行列は静かに進むのではなく、歩きながらの雅楽が奉奏され、なんとも幻想的な世界があたりを包み込みました。
この神々と神職の方たちの行列の後に続くのが一般の参列者です。
稲佐の浜から一緒に、神迎の道(かみむかえのみち)を歩き、出雲大社神楽殿へ向かうのです。
スピード感が伝わってきます!
この行列の中に私もいましたが、これがまた結構なスピードで、皆さん我先にと言わんばかりに前のめりで進まれますので、ちょっと恐かったですね…。
そして、勢溜の鳥居から神域に入り、参道を進み続けると、出雲大社が誇る「松並木の参道(まつなみき の さんどう )」に来ました。
この松並木の参道、かつては皇族や貴族、また例大祭・大祭礼の時には、勅使だけが通ることができる道だったそうです。
現在では、松の木の根を保護するために、参道の両サイドの舗装された道を通るようになっています。
しかし、この時だけは違いました!
普段は歩くことが出来ない松並木の参道が開放されていたのです。
行列は松並木の参道を進み、銅鳥居から境内へ入りました。
とにかく凄い行列でしたので、松の木の根が心配です…。
行列は境内に入り拝殿の前を左に進むと、八百万の神々がお休みになられる西十九社の横を通過し、やっとの事で神楽殿に到着しました。
神迎祭が終了すると神々は眠りに就く?
神楽殿では、出雲国造(いずもこくそう=千家宮司)をはじめ、神職の方たちが八百万の神々を出迎え、神迎祭が執り行われます。
宮司による祝詞の奏上、そして巫女舞が奉奏されました。
八百万の神々の長い旅の疲れは、これで癒されたことでしょう…。
そして最後に、神楽殿の照明は全て消され、稲佐の浜と同様に暗闇に包まれたのです。
八百万の神々が神楽殿から降り、お休みになられる十九社へとお移りになられるためです。
八百万の神々の御霊がお宿りになられた2本の神籬(ひもろぎ)は再び、白い絹の布(絹垣)で覆われ、境内の東西にある東十九社と西十九社へとお移りになられました。
稲佐の浜でもそうでしたが暗闇とはいえども、神籬(ひもろぎ)にお宿りになられた八百万の神々が絹垣に覆われ、目の前を通過される瞬間というのは、なんとも言いがたい感覚に陥ります。
『あぁ…、今、ここに神様がいらっしゃるのだ…』
得も言われぬ体験をさせていただきました。
これで神迎祭は終了しましたが、この時点で時計を見ると、20時半をまわっていたのを覚えています。
そして、ここからも凄い体験をさせていただきました。
稲佐の浜から八百万の神々と共に、お供して神楽殿まで行列で来た参列者は、神々の先導を務めた龍蛇神様に直接、拝礼が出来たのです!
その上、普段は上がることが出来ない神楽殿の中に上げていただき、龍蛇神様にお会いすることが出来ました。
その際も、神楽殿へ上がる参列者の群れは激しく、下足袋の争奪やら我さきにの精神で、ちょっと恐かったです…。
偉大な龍蛇神様にお会いすることができるわけですから、それくらいの試練は乗り越えなくてはいけないですよね…。笑
なんとか試練を乗り越え、無事に龍蛇神様にお会いし拝礼をしましたが、なんとも晴れやかな気持ちになりました。
そして、サプライズは続きます。
拝礼を済ませ、神楽殿を出ると、参列者には更に御神酒と神迎餅をいただけるというアナウンスがあるではありませんか。
もちろん配布されているところに伺い、ありがたく頂戴しました。
帰りに御祭神を参拝しようと本殿前に向かったのですが、あることに気付きました。
行列で神楽殿に向かう際に、八百万の神々がお休みになられる西十九社の横を通り向けたときには、十九社の扉が開いているのを確認していたのです。
それが、神迎祭が終了すると扉が閉まっているではありませんか…。
「あぁ、八百万の神々は、もうお休みになられたのだ…。」
「どうぞ、明日から始まる神議り(かみはかり)に備え、お休み下さい」
そんな思いで、西と東にある十九社と本殿を参拝し、出雲大社を後にしました。
年に一度の神事です。
皆さんにも是非、体験していただきたいですね。
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