神々のお集まりになられる地『出雲地方』より、こんにちは。
オンラインショップ担当の畑です。
数々の試練を乗り越えてきた、大国主命のサクセスストーリーも『国造り』によって、いよいよ最終局面へと近づいていきます。
前回は、大国主命のサクセスストーリーといいますか、なんだかラブストーリーのお話となりました…。
しかし、そんな恋多き大国主命のラブストーリーも『国造り』として、実はかなり重要な意味を成していたことも分かりました。
ここでは大国主命の偉業の一つでもある『国造り』を、ラブストーリーの視点からではなく、広がりをみせる国をどのようにして豊かにしていったのか?
お話をしていきたいと思います。
それでは始めましょう…
パートナーは一寸法師?!
大国主命は国造りに奔走し、あちらこちらへと足を運んでいました。
そして、農耕・漁業・産業から医薬の道まで、生きてゆく上で必要な様々な知恵を授け広めていました。
大国主命が出雲の御大之御前(みほのみさき=現在の美保関町の岬)にやってきた時のことです。
海の向こうから、小さな天の羅摩船(あまのかがみぶね)に乗った、とても小さな神さまが現れたのです。
天の羅摩船(あまのかがみぶね)とは、ガガイモの実を割って作った舟です。
大国主命は名前を聞きますが、そのとても小さい神さまからは答えがありません。
大国主命に付き従ってやって来ていた諸神(もろもろのかみ)にも聞いてみるのですが、みんな知らないと言います。
すると、多邇具久(タニグク)という一匹のヒキガエルの神様が現れ言うには、久延毘古(クエビコ)という案山子(かかし)の神様なら知っているとのこと。
そこで久延毘古(クエビコ)を呼んで尋ねてみたところ、「この神は、神産巣日命(カミムスビノミコト)の御子で少彦名神(スクナビコナノカミ)ですぞ。」と言うのでした。
そして大国主命は、少彦名神(スクナビコナノカミ)を手のひらにのせ、今度は神産巣日命(カミムスビノミコト)にお尋ねしてみたところ、神産巣日命(カミムスビノミコト)は「確かに、私の子だ」、「私の指の間からこぼれ落ちた子どもである」と言うのでした。
神産巣日命(カミムスビノミコト)は続けて言います。
「この子と兄弟の契りを交わし、葦原中国(あしはらなかつくに=今の日本)での国造りをすすめるのです!」
たくさんの神様が登場するので、お忘れでしょうか?
神産巣日命(カミムスビノミコト)…。
覚えていますか?
大国主命サクセスストーリー第一部で登場しました!
大国主命が兄弟神である八十神(ヤソガミ)達に、燃やした大きな岩を山から落とされ殺された時に、赤貝の神である貝比売(キサガイヒメ)と蛤(はまぐり)の神である蛤貝比売(ウムガイヒメ)を遣わし、生き返らせた神様です。
そして、ここでも大国主命の国造りを息子に手伝わせるというのです。
(もはや、大国主命の恩人ですね…)
こうして大国主命と少彦名神(スクナビコナノカミ)、二柱の神による国造りの最強タッグが生まれるわけです。
また体がとても小さく、手のひらサイズの少彦名神(スクナビコナノカミ)は、一寸法師のモデルにもなった神様であると言われています。
仲の良い二人は『国造り』を進める
少彦名神(スクナビコナノカミ)は医薬やおまじない、酒造に通じ、穀物も各地に伝える等、大国主命を様々な面でサポートし、国造りは順調に進んでいきました。
二人で力を合わせることによって、葦原中国(あしはらなかつくに=今の日本)は豊かになっていくわけです。
この二人はすごく仲も良く、風土記にもその様子が記されています。
ある時、大国主命と少彦名神(スクナビコナノカミ)は我慢比べをするのですが、一体、何の我慢比べなのか…?
粘土でできた土を運ぶのと、うんちを我慢するのと、どちらが我慢できるのかというものです。
(壮絶な戦いですね…。笑)
体の小さい少彦名神(スクナビコナノカミ)は土を運び、大国主命はうんちを我慢しました。
結局、我慢が出来なかった大国主命が負けて、その場で野糞(のぐそ)をしてしまうのです…。
すると、少彦名神(スクナビコナノカミ)も既に我慢の限界であったようで、その野糞の上に土をかけたと言われています。
これは、人糞の肥料化がユーモラスに語られているものと思われます。
また、国造りの途上で二人は出雲の国から伊予の国(今の愛媛県一帯)へと旅をしていたところ、少彦名神(スクナビコナノカミ)が突然の病にかかるのです。
大国主命は大分の「速水の湯」を地下から道後の地に引き、温泉を作ると、少彦名神(スクナビコナノカミ)をそこで温めました。
すると少彦名神(スクナビコナノカミ)は、たちまち元気になり、立ち上がったと言われています。
そしてこの地が、道後温泉となるわけですね。
二人で仲良く各地を行脚し、持てる知識を人々に広め、国が豊かになっていく…。
それはとても楽しく、幸せを感じられたことでしょう…。
そんな仲の良い二人にも突然、別れはやってきます…。
古事記や日本書紀によると、少彦名神(スクナビコナノカミ)は突然、常世の国に行かなくてはと言い出し、和歌山三重にある熊野の御埼から、粟にはじかれて常世の国に行ってしまうのです。
失意の底から這い上がり、『国造り』は成し遂げられる
少彦名神(スクナビコナノカミ)という強力な相棒を失い、大国主命は途方に暮れてしまいます。
これからの国造りはどうしたものか?…。
すると海面が光り輝き、大国主命の前に神が現れたのです。
そして、その神は言います。
「私を大和国の三輪山に祀れば国造りに協力しましょう。」
大国主命は「誰か?」と問うと、その神は「我は汝の幸魂(さちみたま)奇魂(くしみたま)なり」と答えたといいます。
それは、大国主命自身の魂の声だったとも言われています。
神には二つの姿があり、ひとつは荒々しい魂である荒魂(あらみたま)、もうひとつは恵みをもたらす和魂(にぎみたま)があります。
(なんだか、人間みたいですね…。)
そして、この恵みをもたらす和魂(にぎみたま)は、さらに幸魂(さきみたま)と奇魂(くしみたま)に分けられます。
幸魂は人に幸を与え、収穫をもたらし、奇魂は奇跡によって幸を与えるとされています。
大国主命は、国造りの半ばで少彦名命を失い、困難に直面した際に、この「幸魂奇魂」の存在を知ることとなるのです。
そして自分自身の中に潜む「幸魂奇魂」の霊力によって、少彦名神(スクナビコナノカミ)を失い、途方に暮れ、諦めかけていた国造りを再開し、偉業を成し遂げることとなるのです。
この大国主命の和魂(にぎみたま)に当たる神様を、大物主神(オオモノヌシノカミ)と言い、大国主命自身の姿となります。
名前を多く持ち、「幸魂奇魂」の存在を知った、大国主命のまた別の呼び名です。
この豊かになった葦原中国(あしはらなかつくに=今の日本)は、古事記でも『豊葦原の瑞穂の国 (とよあしはらのみずほのくに)』と記述されています。
豊かな広々とした葦原のように、瑞々しく美しい稲穂が実る国という意味でしょうか…。
国を広げてゆくだけではなく、広がりを見せるその国に、豊かさをもたらす偉業を成し遂げられた神話は、『国造り』として語り継がれています。
そんな豊かな実りある国をお造りになられた後に、『国譲り』の神話へとつながっていくわけですが…。
『国譲り』とは一体、どんなお話なのか?
次回は、いよいよ大国主命サクセスストーリー完結編です!
大国主命は誰に国を譲るのか?
どのようにして譲られるのか?
お話していきたいと思います。
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