石の音、ときどき日常

新コスメにまつわる神話や風土の話 その18  ~ 真名井の清水 ~

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出雲発 祈りをテーマとした
温泉水×和漢コスメ誕生。

この冬、めのやから新しく誕生する
コスメブランドについて、
出雲地方に伝わる神話や
まつわる風土をご紹介します。

出雲大社には三つの井戸があり
それぞれの井戸は
神事の際、大事な役割を担っています。

その中の一つ、「真名井の清水」は
固有の神様が祀られ、
例祭も斎行される井戸です。

この井戸に祀られる女神と
風土記時代の出雲郡の神社から
当時を考察してみます。

真名井の清水と宇迦山。

さてさて。件の真名井の清水。
干ばつでも枯れることが
無いといわれるこの湧き水。
こういった特別な湧き水には
「真名井」と名づけられることがあります。
特に水量が多かったり、天から引いてきた
なんて由来のものには更に特別な
天(あめ)の真名井」ですとか。

この「真名井」とは天のアマテラスの国で
アマテラスとスサノヲが真偽をかけて
誓約(うけい)という占いを行った際に
登場する、清冽な泉です。

さて一般的に井戸には水神さまや竜神さまが
祀られることが多いと聞きます。

漠然と「水神」とだけ書かれていることも
ありますので、必ずしも固有の神様という
訳では無いようです。

実際、出雲大社の境内にある
御饌井(みけい)という井戸について

近くにいらっしゃった大社の神職の方に
なんと仰る神様が祀られているのか
伺いましたら、「水神さまと竜神さま」

といった返答を頂き、真名井の清水の様に
具体的にどなた様と言うわけでは
ありませんとの事でした。

そして水に関わる神様を
Wikipediaで検索してみると
実に18柱の神々の名前が列挙されています。

ですがこちらの真名井の清水には
女神が祀られています。
ご祭神の名前は「ミズハノメ」。

私が思うにこの場所の水の神様は
どなた様でもいいわけでは
ないような気がします。

前述のミズハノメ。
「ミズハ」は「水早」ですとか

「水走」の意味で灌漑用水の女神では
ないかと考えられるそうです。

またこの女神はイザナミが
火の神を生んだ時の火傷で
もがき苦しんだ時の失禁から
成った女神です。
糞尿は農耕の肥料に結びつき
その事から灌漑の女神に繋がります。

そしてこの湧き水の背後に連なる山は
「宇迦山(うがやま)」と呼ばれ
出雲大社の一の鳥居の前に掛かる橋の名前
宇迦橋の由来にもなってます。

「宇迦(うが・うか)」の「宇」は
「御(み)」、「迦」は「饌(け)」の
転じで、つまりは「御饌(みけ)」、
食物のことになり、この山は稲作や畑作に
重要な山と意味づけられます。

その重要性とは
水だったのではないでしょうか!?

実際、出雲大社後方から西に続く
宇迦山(北山山地)には幾つかの滝や

大社町付近には水仕事をしたであろう
洗い場的な
場所が数カ所見つかります

登山道にある川や滝です。


水事場らしき池。

また知人のお宅は水道を引いて無く
弥山の湧き水を引き生活していますので
恒常的に豊富な水量が
期待できる土地なのでしょう。
なるほど特別な名前「真名井」と
名づけられたわけです。

しかしながら、この北山の麓は
決して農作地にむいていた場所とは
言い切れないような気がします。

北山の周囲、西側の日御碕から
北側の日本海海岸線、そして
南へ広がる出雲郡。

※解説出雲国風土記
島根県古代文化センター【編】
付録地図に加筆。

赤い枠線が出雲郡。
紫色の楕円が宇迦山、北山山地です。

風土記の時代の平地を見てみますと
出雲平野の東側は陸地ではなく宍道湖。
さらに神門水海と呼ばれる内海が広がり
湿地も多かったのではないででしょうか。

そして水色や紺色で斜線を施したところは
当時の宍道湖や内海です。

農作地が非常に狭いようです。
その事を示すかのように
出雲郡の全神社122社の内
39社がアズキ神社という神社です。

現在は阿須伎神社にすべて
合祀されているそうですが
当時は出雲郡の実に3割強の神社が
同じ神社でした。

アズキ神社のご祭神は
オオクニヌシの御子神アジスキタカヒコネ。
ご神名の中に「スキ」=「鋤(すき)」の
響きがあることから、農耕神とされたと
考察されています。

多くの収穫を望む以前に農作地開拓に対する
切な祈りがあったのではないでしょうか?

「宇迦山」はスサノヲがオオクニヌシに
国作りを託した時、「宇迦山の麓に
太い宮柱を
地中深く掘りたて、
天に届くほどの
千木をそびやかした
宮殿に住め!」と
指南します。

それにしては作物に恵まれた土地だったかは
ちょっと疑問が残ります。
それ故、宇迦山は北山と違う山ではないかと
思っていらっしゃる人もいるでしょう。

もしかしたらスサノヲの言葉を
実現するため、出雲の当時の人々は
北山を宇迦山にすべく、農耕地開拓に勤しみ
その結果、アズキ神社が40社という
数にまで増えてしまったのでは⁉
といった想像を巡らせてしまわずには
いられませんでした。

お付き合いくださって
ありがとうございます。
本日はこの辺で。

ではまたの機会に。
ご自愛くださいますように。

 

新ブランドについて◆

出雲の人は雨が降れば土地を清め、
風が吹けば厄を吹き払うといって
目には見えない存在を身近に感じ
大切にしています。

遠い昔から人々の生活と共にあった
出雲の薬草。
遠い昔からやさしく、
柔らかく湧き続けている玉造の温泉。

この土地の人たちは自然に感謝し、
生があることへの感謝を静かに宣って
繋いできました。

一日の終わりに、
自分の中のささやかな儀式のように、
明日に祈るように。

「リセット、癒し、整える」ことで
健やかに明日を迎えるためのプロダクトです。

 

◆おなじ風土のもとに織りなす文化が共鳴し循環することを目指して◆

化粧品は温泉水と自然由来の成分から製造。
出雲地方で生まれた文化が造り手と共に共鳴し
循環していくことを目指しています。

主成分は島根県産の真菰(まこも)、
やまもも、塩、そして日本古来の御守り
「勾玉」を継承している
めのや本店から湧き出ている玉造温泉水。

真菰はしめ縄や神事にも使われ、
「神が宿る草」と呼ばれており、
やまももはイザナミイザナギの
黄泉の国のくだりに登場。
神の名前を持つ果物と呼ばれていました。

いずれも出雲風土記に登場する薬草です。
古代出雲は医薬の国とも
いわれていたことからも、
古来より出雲の人にとって
薬草は身近な存在でした。

日本古来より伝わる薬草と
洗い浄めるという文化。
気持ちをリセットし、
心身を癒しながら
みずみずしい肌へと導きます。

この冬の発売を
どうぞ楽しみにお待ちください。

 

 

【新コスメにまつわる神話や風土の話】過去のブログは下記から

新コスメにまつわる神話や風土の話 その1  ~ 玉造温泉 ~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その2  ~古代出雲は医薬の国だった 稲羽の素兎編~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その3  ~古代出雲は医薬の国だった ヤガミヒメ編~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その4   ~古代出雲は医薬の国だった 大国主の蘇生編①~

新コスメにまつわる神話や風土の話その5   ~古代出雲は医薬の国だった 大国主の蘇生編②~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その6 ~伝説の医者がモデル?スクナヒコナ編~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その7 ~ちっちゃな神様の足跡を追う スクナヒコナ編②~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その8 ~ちっちゃな神様の足跡を追う スクナヒコナ編③~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その9 ~ちっちゃな神様の足跡を追う スクナヒコナ編④~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その10 ~ちっちゃな神様の足跡を追う スクナヒコナ編⑤~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その11 ~出雲國風土記~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その12 ~出雲地方に見る荒神信仰(藁蛇)~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その13  ~神様の隠れ籠もる山  神奈備山~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その14  ~神様の隠れ籠もる山  神奈備山その2~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その15  ~ 古代の人々の想い 水編 ~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その16  ~風土記掲載の古湯を訪ねる~

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