石の音、ときどき日常

新コスメにまつわる神話や風土の話 その19 ~ 宍道湖を見守る航海の神様や神社 ~

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出雲発 祈りをテーマとした
温泉水×和漢コスメ誕生。

この冬、めのやから新しく誕生する
コスメブランドについて、
出雲地方に伝わる神話や
まつわる風土をご紹介します。

 現在と違い、近代以前までは
輸送手段の要は水上交通だったそうです。

現在は宍道湖を通る船といえば
しじみ漁の小型船や観光のための
クルージング船くらいのようですが
当時は対岸へ物資の運搬や
他国からの船が行き来し
斐伊川や神戸川を通り
山間部まで物資が運ばれたようです。

過去は行き交う船舶を、
現在は漁に勤しむ舟を
見守るかのように

ひっそりと佇む神社があります。
今回はそんなお話を。

巨大物流ターミナルと航海安全の祈り

さてさて。
件の宍道湖。
前述した通りしじみ漁が盛んな湖です。
しじみが捕れる湖は汽水湖。
宍道湖は大橋川、中海、境水道を介し
日本海に通じることから塩分を含むようです。

しじみ漁の様子です。

しじみ漁は爪のついた篭に
竿をつけた「ジョレン」と呼ばれる
漁具を
使い湖底からしじみを掻きます。
手掻き操業、縄かけ操業(機械掻き)、
入り掻き操業と呼ばれる方法があります。

写真の皆さんは機械掻きをされていますね。
船の舵は足で取っているようです。

ジョレンを引き上げている漁師さんがいました。
柄の長さは5~6mくらいでしょうか⁉

資源保護の為、漁は月火木金の
週四回の午前中、時刻も時間も決められ
採ることの出来るしじみの大きさや量も
決められています。

深いところでも6mあまりの宍道湖。
しじみは水深4m以上の湖底には
住めないそうで、しじみ漁は
岸に近い所で行われていました。

風土記の時代、宍道湖は中海と共に
「入海」と呼ばれ、
今もある「嫁ケ島」の周りの一部の地域のみ
「野代海」と呼ばれていたようです。


宍道湖唯一の島、嫁ヶ島。

2019年8月撮影。
嫁ヶ島に鳥居が見えることから解るように
祠が建っています。

竹生島神社(ちくぶじまじんじゃ)。
弁財天と同一神といわれるイチキシマ姫を
水上交通の安全と豊漁祈願のために
宮島の厳島神社から
1611年に勧請したそうです。

「竹生島」は琵琶湖にある島の名前で
弁財天を祀っています。
厳島神社から勧請したのに
竹生島神社という社名は
なにやらこの辺に縁があるように察します。

近代以前は物資の運搬は
主に船が利用されていました。
古墳時代に玉湯町で産した石で作られた
棺が対岸の宍道湖北岸の古墳でも
見つかっており、重量のあるものでも
筏などを使い運搬されたと考えられています。

諸国からの物資を乗せた船が
宍道湖を往来したことでしょう。
出雲市の西林木町、矢尾町、日下町に跨る
山持(ざんもち)遺跡の出土品には
近江系の土器、吉備系の土器など
国内各地の土器だけでは無く
朝鮮半島各地の土器も出土しています。

遺跡は今でこそ内陸に入っていますが
風土記の時代は湖岸近く、
実に山持遺跡は大物流ターミナルだったと
いえるでしょう。
積荷を替え、川を利用しあちこちへと
物資は運ばれたと想像します。

また南インドから東南アジアにかけて
作られていた赤褐色の
ガラス小玉が出土しており
どういった経緯でこの地に運ばれたのかは
定かではありませんが、もしかしたら
東南アジアとの物流があったのかもと
想像をせずにはいられません。

水運が盛んだったことを
今に残す神社があります。
先程の竹生島神社とはまた別の神社です。

住所が定かではありませんが
玉作湯神社の脇道を山に入っていくと
烏天狗の案内が見えてきます。

コチラの神社。

2019年3月撮影。

玉作湯神社のある山、湯山の
さらに背後にある山の山頂です。

狛犬の台座が円形のものは
ちょっと古いものだそうです。


傍らに立てられた板に「金刀比羅・・・」の
文字が薄っすらと確認できます。

金刀比羅宮、こんぴらさんです。
こんぴらさんはオオクニヌシの
いわば御分霊、和魂(にぎみたま)。

神様の魂は4つの側面を持ち並列的に
存在しているといわれています。

代表的に相対する存在なのが
「荒魂(あらみたま)」と
「和魂(にぎみたま)」。

荒魂は神様の荒ぶる側面。
対して和魂は神様の優しく平和的な側面と
いわれています。
同じ神様の魂なのですが、
別の神に見えるほどの強い個性の表れであり
古事記でオオクニヌシは自身の和魂に
貴方は誰なのかと尋ねるほどです。

このこんぴらさんの手前に山に
オオクニヌシが祀られていますので
和魂として祀られているのか
玉作湯神社の遠藤宮司に伺いました。

この祠はお寺さんが建てたものだそうです。
全国のこんぴらさんの半分かそれ以上は
お寺さんが建てたものだそうで、
今はお寺から離れ、宮司さんがお祭りを
されているとのこと


なるほどお寺由来だけあって
明王さんや烏天狗がいます。

こんぴらさんは船や海上交通の守り神です。
その他漁師さんや船員さんに関わりの
深い神様です。

更にこの山の奥にも山があり
山頂には「焼火神社(たくひじんじゃ)」が
以前あったのだそうです。

焼火神社は社名の通り「火を焚いた」事から
行き交う船の灯台の役割を担ったといわれる
隠岐の島にある神仏習合の色濃い神社です。


2019年4月撮影。
岩屋に押し込むように建っています。

神社の境内からは海が望めました。

玉作神社の後方の山の焼火神社は
こちらから勧請されたそうです。

玉作湯神社の前には川が流れ、
低くなった川の向こうには宍道湖、
当時の入海が見えたのでしょう。

当時商品貿易や運搬の主流だった水上交通。
ですが、それは決して安全な交通手段では
無かったことを物語っているのだと感じます。

船の神様に航海安全の神社。
しかも離れた所から霊験あらたかな
神様や神社の勧請。
それも2社も。

当時の人々の畏怖の念が伝わって
来るかのような、そんな懐古の気持ちが
頭に浮かびました。

 

お付き合いくださって
ありがとうございます。
本日はこの辺で。

ではまたの機会に。
ご自愛くださいますように。

 

新ブランドについて◆

出雲の人は雨が降れば土地を清め、
風が吹けば厄を吹き払うといって
目には見えない存在を身近に感じ
大切にしています。

遠い昔から人々の生活と共にあった
出雲の薬草。
遠い昔からやさしく、
柔らかく湧き続けている玉造の温泉。

この土地の人たちは自然に感謝し、
生があることへの感謝を静かに宣って
繋いできました。

一日の終わりに、
自分の中のささやかな儀式のように、
明日に祈るように。

「リセット、癒し、整える」ことで
健やかに明日を迎えるためのプロダクトです。

 

◆おなじ風土のもとに織りなす文化が共鳴し循環することを目指して◆

化粧品は温泉水と自然由来の成分から製造。
出雲地方で生まれた文化が造り手と共に共鳴し
循環していくことを目指しています。

主成分は島根県産の真菰(まこも)、
やまもも、塩、そして日本古来の御守り
「勾玉」を継承している
めのや本店から湧き出ている玉造温泉水。

真菰はしめ縄や神事にも使われ、
「神が宿る草」と呼ばれており、
やまももはイザナミイザナギの
黄泉の国のくだりに登場。
神の名前を持つ果物と呼ばれていました。

いずれも出雲風土記に登場する薬草です。
古代出雲は医薬の国とも
いわれていたことからも、
古来より出雲の人にとって
薬草は身近な存在でした。

日本古来より伝わる薬草と
洗い浄めるという文化。
気持ちをリセットし、
心身を癒しながら
みずみずしい肌へと導きます。

この冬の発売を
どうぞ楽しみにお待ちください。

 

 

【新コスメにまつわる神話や風土の話】過去のブログは下記から

新コスメにまつわる神話や風土の話 その1  ~ 玉造温泉 ~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その2  ~古代出雲は医薬の国だった 稲羽の素兎編~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その3  ~古代出雲は医薬の国だった ヤガミヒメ編~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その4   ~古代出雲は医薬の国だった 大国主の蘇生編①~

新コスメにまつわる神話や風土の話その5   ~古代出雲は医薬の国だった 大国主の蘇生編②~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その6 ~伝説の医者がモデル?スクナヒコナ編~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その7 ~ちっちゃな神様の足跡を追う スクナヒコナ編②~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その8 ~ちっちゃな神様の足跡を追う スクナヒコナ編③~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その9 ~ちっちゃな神様の足跡を追う スクナヒコナ編④~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その10 ~ちっちゃな神様の足跡を追う スクナヒコナ編⑤~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その11 ~出雲國風土記~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その12 ~出雲地方に見る荒神信仰(藁蛇)~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その13  ~神様の隠れ籠もる山  神奈備山~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その14  ~神様の隠れ籠もる山  神奈備山その2~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その15  ~ 古代の人々の想い 水編 ~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その16  ~風土記掲載の古湯を訪ねる~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その17  ~築地松のある風景~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その18  ~ 真名井の清水 ~

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