めのうさとえすこな散歩

古事記と出雲53 大国主命⑱ ~ オオクニヌシの琴 琴引山・琴弾山神社 編 ~

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

みなさまこんにちは。
オンラインショップの朝倉です。
ブログを更新しました。
しばしお付き合いください。

 

前回はオオクニヌシの命を救った
ネズミのお話をさせて頂きました。
今回は古事記のストーリーを
進めていきます。

火を放たれた野から
ネズミの助けを借りて
鏑矢を持ち帰ったオオクニヌシ。
スサノヲはオオクニヌシを
家に招き入れます。

オオクニヌシを大広間に通し、
スサノヲは
自分の頭のシラミを採れと
オオクニヌシに言います。
オオクニヌシがスサノヲの頭を見ると
そこに居たのはシラミでは無く、
何匹ものムカデでした。


その時、スセリがオオクニヌシに
椋(ムク)の木の実と赤土を渡します。
オオクニヌシはその実と赤土を
口に含んではツバと一緒に吐き出しました。
スサノヲはムカデを噛み砕き
吐き出しているのだと思い込み
オオクニヌシを愛しく思います。
そして寝てしまうのでした。

オオクニヌシは眠り込んだスサノヲの
髪の毛を屋根の垂木に結わえ付け、
さらに戸口を
大きな岩で塞ぎ、
スセリを背負います。
そしてスサノヲの太刀と弓矢、そして琴を
手に取り逃げるのでした。

※イメージ。

ところがその時、琴が木に触れ
地面が轟きました。
その振動で目覚めたスサノヲ。
ですが髪の毛は垂木に結ばれています。
そこでスサノヲは建物を引き倒しますが

結わえた髪の毛はほどけません。
解いている間にオオクニヌシは
遠くまで逃げていました。
やっと追いかけ黄泉の国との境、
黄泉比良坂にオオクニヌシが
差し掛かった時、スサノヲは向こうに見える
オオクニヌシにこう叫びます。
「お前が持つその太刀と弓で八十神たちを
追い詰め、お前は大国主の神となり
またウツシ国玉の神となり
私の娘スセリを正妻に迎え
ウカの山の麓にしっかりと太い柱で
天までそびえる立派な宮を建て住むのだ、
コヤツめ!」

と、この辺まで。
とまあ、今回は長めでした。

実は今まで「オオナムチ」と
呼ばれていましたがこれを気に
「オオクニヌシ」になります。

それにしてもスゴイですね!
「頭のシラミを採れ」と言われて
見てみたらムカデだったとは!

そこで動じず、スセリの助け船を理解し
ムクの実と赤土を噛み砕いて
ペッと吐いた事で「かわいいヤツだ」
と思うというこの2神の構図。

なんとも豪傑な感じです。

心を許したスサノヲは眠ってしまう訳ですが
髪を結わえつけるのは柱ではなく垂木です。
リフォーム改修用語 垂木
(シュウケン工業株式会社様のHPより転載)

そう、屋根に使われる部分です。
スサノヲが寝ている間に太刀や弓、
琴を拝借、
スセリを背負う訳ですが、
嫌がる相手を
背負うのはまず無理です。
という事はスセリも納得の行動なわけですね。
しかも、戸を塞ぐ岩は「五百引石」、
「いほびきのいわ」と書かれ、これは
500人がかりで引くことの出来る岩、
つまりは巨石です。
ここまでやると
確信犯です。
オオクニヌシとスセリは
黄泉の国から逃げるだけではなく
スサノヲのご神宝を奪っていきます。

起きたスサノヲもまた圧巻。
結ばれた髪の毛で建物を引き倒します。

持ち出した太刀と弓は「生太刀(いくたち)」
「生弓矢(いくゆみや)」と呼ばれ、
この「生(いく)」は
「活力」と訳されますので、つまりは
「威力ある」といった感じでしょうか。
この武器に対してもう一つ、
琴が気になります。

「天詔琴(あめののりごと)」と書かれ
「天」は「立派な」「詔琴(のりごと)」は
本居宣長は著書、古事記伝の中で
琴の正式名称だと解説しています。
神様の教えを請う時は、必ず琴を弾き
神は琴に降臨して人に乗り移ってお告げを
くだされた。
とあります。

「詔」は「みことのり」とも読み
今では「天皇陛下の言葉」と解釈されますが
「命(尊)宣り」と考えると、
「神様の言葉」と解釈出来るのでは
ないでしょうか?
武器は軍事的支配の象徴と考えられ、対して
琴は政治的支配の象徴との説明も目にします。
スサノヲの試練を乗り越え?
最後は駆け落ち同然でスサノヲの元から
娘を嫁にもらい、黄泉の国からウツシ国に
戻るオオクニヌシ。
ウツシは「現し」「顕し」つまりは
「根の国」に対して、「現世」の
表現でしょうか。

さてさて。
本日ご紹介する神社は
島根県飯石郡飯南町佐見、琴引山にある
琴弾山神社です。琴引山がこちら。


写真中央の目立つ山が琴引山です。
(島根県飯石郡飯南町赤名からの遠景)

出雲國風土記にオオクニヌシの
琴があると書かれ、その事が山の名前の
由来となっています。

その琴がスサノヲの元から
持ってきた琴か
どうかは解らないのですが、
風土記にはその琴の大きさも記され

かなり具体的です。

この山の峯に窟(いわや)がある。
中には所造天下大神の御琴がある。
長さ七尺(約2m)
広さは三尺
(約89cm)
厚さは一尺五寸
(約45cm)

また石神がある。

この窟は三ヶ所の候補があるようです。
大神岩。

「入」の文字のように重なる巨石。

2つ目は穴神琴弾岩。
琴の岩屋とも呼ばれます。
写真右側に見えるのが入り口?

琴を収めるには若干窮屈ですが
中は割と広くなっていました。

3つ目は山頂近くの琴弾山神社の参道です。

石段の上にお社があります。
この日は例祭の日。扉が開いています。
御祭神はオオクニヌシ、イザナミ。

※写真は全て2018年9月撮影。

また、「飯南町の歴史と文化」のHPには
オオクニヌシは根の国から逃げ帰った後、
琴引山にスセリ姫と登り、岩屋にこもって、
琴を奏でながら出雲国の国づくりについて
考えを巡らせました。
さらに琴引山の山頂からは、
遠く出雲平野を眺め
これから鎮まるべき場所を
現在の出雲大社の地に定めたという。
と書かれています。

 

標高1014mのこの山は
先の豪雨で登山道が荒れ
飯南町が登山禁止を伝えています。
途中滝もあり、登山口も幾つかある
人気の山ですが、オオクニヌシの琴や
神在祭に関わる山、また出雲國風土記に
掲載があるなど、心くすぐられる様な
魅力もあふれる山なのです。

 

お付き合いくださって
ありがとうございます。
本日はこの辺で。
またの機会に。
ご自愛くださいますように。

 

大国主命編 過去のブログはこちら

古事記と出雲㊱ 大国主命① ~ その出生地はどこか?~

古事記と出雲㊲ 大国主命② ~ オオクニヌシのお爺さんお婆さん 長浜神社編 ~

古事記と出雲㊳ 大国主命③ ~ オオクニヌシのお父さん 日御碕神社 編 ~

古事記と出雲㊴ 大国主命④ ~ 稲羽の素兎 白兎神社 編 ~

古事記と出雲㊵ 大国主命⑤ ~ 稲羽の素兎 白兎海岸 編 ~

古事記と出雲㊶ 大国主命⑥ ~ ヤガミヒメの故郷 賣沼神社 編 ~

古事記と出雲㊷ 大国主命⑦ ~ オオクニヌシの受難その1 赤猪岩神社 ~

古事記と出雲㊸ 大国主命⑧ ~ オオクニヌシの受難その2 赤猪石・赤猪神社跡(元宮) ~

古事記と出雲㊹ 大国主命⑨ ~ オオクニヌシの甦り 清水井 清水川神社 ~

古事記と出雲㊺ 大国主命⑩ ~ オオクニヌシの受難その3 大石見神社 編 ~

古事記と出雲㊻ 大国主命⑪ ~ 救世主 オオヤビコはスサノヲの御子神? ~

古事記と出雲㊼ 大国主命⑫ ~ イソタケルを祀る「韓国伊太氐神社」の不思議 編 ~

古事記と出雲㊽ 大国主命⑬ ~ オオクニヌシの根の国訪問 スセリヒメとの出会い 編 ~

古事記と出雲㊾ 大国主命⑭ ~ スセリヒメを祀る神社 佐比賣山神社 編 ~

古事記と出雲㊿ 大国主命⑮ ~ スセリヒメ終焉の地 唐王神社 前編 ~

古事記と出雲51 大国主命⑯ ~ スセリヒメ終焉の地 唐王神社 後編 ~

古事記と出雲52 大国主命⑰ ~ 大国主命の使いはウサギ?ネズミ? ~ 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加