出雲発 祈りをテーマとした
温泉水×和漢コスメ kiu 祈雨 誕生。
めのやから新しく誕生する
コスメブランドについて、
出雲地方に伝わる神話や
まつわる風土をご紹介します。
今回も前回に引き続き、
雨乞の石神さんをご紹介させて頂きます。
前回と前々回に紹介させて頂いた
石神さんとはまた違う雨乞いの儀式を
行っていた石神さんのようです。
2つの伝承を持つ雨乞いの石柱。
さてさて件の王院山。
出雲風土記に「田俣山」とあるようです。
標高は553.9m。出雲市で最も高い山です。
出雲市佐田町朝原。
この山頂に1mほどの自然石の石柱が10数本
立ったり倒れていたりします。
この石柱には2つの伝承があります。
一つはまるでシンデレラの様な伝説です。
『光仁天皇が出雲大社に祈願をされ
お后を探されましたある夜、
帝は夢をみられました。
出雲國の上塩冶(かみえんや)に
美しくて賢い娘がいる。
この絵と沓(くつ)を持って行って
引き合わせてみよ。」という
お告げがありました。
夢から覚めて枕元を見ると、絵と沓が
置いてありました。
帝は大変喜ばれ、早速出雲に使いを出しました。
使いの人は上塩冶で田植えをしていた
親孝行で信心深い一人の娘を見つけました。
その娘は絵とそっくりで美しく、
沓も足にちょうど合ったそうです。
娘は都に召され「吉祥姫」と呼ばれました。
天皇が亡くなられたので王院山に
お墓を建てたそうで、それが
「王院ヶ墓(おういんがはか)」または
「院の塚」と呼ばれているそうです。』
(朝山伝説「金剛峯寺縁起」より抜粋・意訳)
異説もあり、吉祥姫が都からこの地に帰る際、
付き添ってきた高貴な方が亡くなりこの山に
祀られたという伝承もあるようですね。
こちらの方がしっくり来るような気もします。
光仁天皇の御陵は田原塚ノ本古墳として
奈良市にあるようですので、お墓というより
「御霊を鎮めた」ですとか「遙拝所」として
考えた方が良いのかもしれません。
そしてもう一つは干ばつに苦しむ住民が
「雨乞いの碑」として建てたという説です。
実際目にして確かめてみましょう。
出雲市最高峰ではありますが
駐車場が高い標高の位置にあるので
実際は170~180mほどの標高を登ります。
登山道には横木の階段が続いていますので、
20~30分ほどで登れる山です。
取材に行った先週の土曜日は
午後から雨予報。
なんとか雨が降る前に!と願っていましたが
この写真を撮った途端にポツリ、ポツリ・・・
現在の様子をご報告と思っていましたので
意に介さず予定通り登ってきました。
まだ登山のシーズンでは無いのか
単に登る人が少ないのか、
整備された登山道の記憶とは裏腹
クマザサの洗礼を浴びました。
ですが山頂近くは更に背の高いクマザサが。
葉に雨の痕が見えますね。
クマザサを漕ぎ分け20分ほどで登頂。
石柱が14本ほど不規則に立っています。
360°方向に展望があり、
天気が良ければ宍道湖や
周りの山々が見渡せる眺めのいい山です。
天気の良かった以前の写真がこちら。
前述の吉祥姫伝説よりは
私は個人的に雨乞いの儀式の
石柱と思っている根拠がこちらです。
「雨」の文字が見えます。
「石神さんを訪ねて」の本には
『「雨乞い」と判読できる字・・・』と
書いてあるのですが、そう思って読んでみても
雨の下の文字が判読できません。
2017年の写真が解りやすいかと
確認しましたがちょっと難しく感じます。
この石柱群の雨乞いの儀式は
水入りの竹筒を持ち、件の吉祥姫が
葬られている金剛峯寺のお墓、
「吉祥姫五輪塔」と王院山山頂の
立石群を巡り降雨を祈願するのだとか。
1994年、その年に住民が伝承に則り
雨乞い祈願をしたそうです。
すると一週間後に降雨があり
人々は願いが通じたと喜びあった、と
前出の「石神さんを訪ねて」にあります。
1994年は春以来の少雨により
渇水が深刻化し、給水制限や
断水を行った都道府県は40にも及びました。
その年の5月以降の農作物被害額は
1,409億円にもなったそうです。
特に九州地方は翌年1995年5月末まで
時間給水が続いた年でした。
王院山で雨乞いの儀式を行っていたのは
出雲市塩冶町の先人達だそうです。
塩冶町から王院山までは直線距離で
南に10㎞ほどあります。
道のりで16㎞。車で30分かかります。
雨乞いの儀式を離れた山で行ったのは
王院山は目立つ高い山で、
高い山は天に近いと考えたのでしょうか?
少しでも願いが届くようにと。
昭和初期まで行われた祈雨の儀式。
岩に水をかけるのは、お墓参りの際の
墓石にする所作と重なります。
故人への鎮魂が結果として
雨を呼び寄せたのでしょうか?
「雨」の文字が当時の祈りを留めている
モニュメントの様でした。
お付き合いくださって
ありがとうございます。
本日はこの辺で。
ではまたの機会に。
ご自愛くださいますように。
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