石の音、ときどき日常

新コスメにまつわる神話や風土の話 その㊼ ~ 出雲大社の「身逃げ神事」と「真菰」編 ~

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出雲発 祈りをテーマとした
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めのやから誕生した
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出雲地方に伝わる神話や
まつわる風土、伝承をご紹介します。

出雲大社で斎行される祭祀の数は年間72。
その中には比較的新しいものもあれば
古来行われていましたが、
今は廃絶したものも
あるのだそうです。

この72度の祭祀のうち秋の神在祭、
それに続く古伝新嘗祭とともに由緒が
古いながらも、明確な説明を欠くと
いわれている神事に8月14日の深夜斎行の

「身逃げ神事(みにげのしんじ)」と
これに続き15日朝に斎行される
「爪剥祭(つまむぎさい)」が
あります。

見られると穢れるといわれる神事。

島根観光ナビのHPに簡潔に
神事の概要が書かれています。

【身逃(みにげ)神事(神幸祭)】
 8月14日深夜(午前1時)境内の門は
すべて開放され、
禰宜(ねぎ)は
本殿に参拝し、
大国主命の
御神幸(ごしんこう)にお供します。

湊(みなと)社、赤人(あかひと)社に詣で
稲佐の浜の塩掻島(しおかきしま)で
祭事を行い、
国造館から本殿へ帰着します。
この神事の途中、
人に逢うと出直しをしなければならないため
町内の人々は早くから門戸を閉ざし、
外出も避けています。

この「身逃げ神事」。
祭祀を執り行うのは宮司ではなく
禰宜と呼ばれる役職の神官で、
祭祀のために入念な潔斎を行うそうです。

8月10日から、禰宜は斎館に籠もり
特別な火で調理した食事しか取りません。
そして11日の夕方、稲佐の浜で
海水に浸かり、穢れを祓います。
そしてまた斎館に戻り、潔斎を続けます。
これは祭祀の際、神様のご神幸のお供をする
といった、大事な役目を果たすためです。

来る8月14日の深夜1:00。
出雲大社の門は全て開かれます。
これは参拝のためではなく、
「身逃げ神事」の為です。

本殿前で祝詞を挙げた禰宜は
大国主大神のお供として
出雲大社を出た後、

湊社→山辺神社(赤人社)→
塩掻島(しおかきじま)と3ヶ所を巡り
3か所で祭祀を行います。
塩掻島で潮(海水)を汲まれ四方に拝し
出雲大社に戻ってきます。

この道中、誰かに見られると
穢れるといわれ、最初から
神事のやり直しとなります。

禰宜は「狩衣(かりぎぬ)」という
装束を身に纏い、右手には「青竹の杖」、
左手には真菰で作った「苞(つと)」と
「火縄」を持つ出で立ちです。


※千家尊統 著 出雲大社(学生社)125ページより転載。

図の右上の題字の中に
「供奉(ぐぶ)」とありますが

この供奉は「お供」の意味です。
では、供奉として禰宜が巡拝する神社を
ご紹介します。

 

湊社(出雲大社境外摂社)出雲市大社町中荒木。
御祭神はクシヤタマ。この神様は
国譲りが終わった後に、
自ら料理人となってアマテラスの使者を
料理でもてなした神様です。
その際、その身を鵜に変え
海に潜り海の底の粘土で器を作り、
海藻から火を起こす道具を作り
調理のための火をおこしました。


一見拝殿にも見えますが、舞台のような造りの
舞殿が手前にあります。


流造りのお社。
出雲大社の摂社・末社は境内、境外合わせて
23社とWikipediaにありますが、
その殆どが大社造りの社殿で、
このお社と同じ流造りは上社と下社。
全部で三社しか無いようです。

「湊社」の社名の由来は
その昔、この場所は船で出雲大社に
参拝に来られた際の「港」だった事に
由来するのだとか。
宍道湖がまだ入海(内海)だった頃、
船はこの場所に着岸したようです。

 

山辺(やまべ)神社(赤人社)。
出雲市大社町杵築西2084。
御祭神は大国主命、天照大神、少彦名命、
そして山辺赤人之命。
こちらは出雲大社の摂社末社では

無いようです。

社殿は拝殿の裏に独立してあります。

お賽銭箱を探しますと、
先程の拝殿の建物の後ろに
郵便受けのようにありました。


塩掻島。

稲佐の浜の弁天島から300mほど
北に行った所にある岩です。
今では砂地が広がり陸にありますが
以前は弁天島同様、海に浮かぶ
島だったそうです。
写真を撮った日は8月14日の午後。
祭祀はこの日、日付が替わった
深夜に終わっていましたが
注連縄がまだ張られていました。

柵が開けられています。
石垣から雨が湧き水となって池のように。

塩掻島。

潮汲み(塩掻きは同義)はこの場所が
陸になっていることから、
海に出て行うのでしょうか?
汲んだ潮は15日の爪剥祭に供えられます。

 

山辺神社の社名になっている御祭神の
山辺(山部)赤人は歌人として有名ですが
実は先程の湊社の御祭神、
クシヤタマと関わりがあります。
この二神は「別火(べっか)氏」の
「始祖」といわれています。

「別火氏」とはその名の通り
「火を別に管理する」事を職務とした
出雲大社の上官です。
goo辞書で「別火」を調べると
神職などが日常用いる火による
穢 (けが) れを忌んで、
神事・祭事に際して炊事の火を
別にすること。また、
服喪にある者などが穢れを他に
うつさないように炊事の火を
別にすること。べつび。
とあります。

日常的に使う火を介して穢がうつると
考えられ、祭祀に使う火を
別に管理した
様です。
元々この祭祀は別火氏が行った祭祀とも
いわれています。

そして15日の朝に斎行される
「爪剥祭(つまむぎさい)」に
塩掻島で汲んだ潮が使われ、
謎の多いこの一連の神事は幕を閉じます。

「身逃げ」「爪剥」など、
物騒な文言が使われるこの神事。
その由来も定かでは無いようですが、
前述の本「出雲大社」では第82代国造である
著者の千家尊統宮司は
『「身逃げ」を千葉県南部、上総、安房で
行われている物忌み(身の穢れを除く事)を

「ミカリ」または「ミカワリ」と
呼んでいることから
「身逃げ」=「身変わり」と考え
「俗の身を改めて、清い祭りの人となる
準備期間であろう。』と述べています。

そして清い祭の人となり、
神様のお供を努め、神前への供物としての
潮を汲み、その潮が供えられる
「爪剥祭(つまむぎさい)」は
『古くは「ツマムキ」と呼んだ事から
「ツマ」は魂、「ムキ」は「マキ」の意味で
求める、招く、迎える等の意を表す、
「タマムキ」と変換でき「魂迎え」、つまり
霊魂の憑りくるのを待ち迎える為の神事と
私は解釈している。』(要訳)
と考察しています。

その理由として、元々は霊魂を迎える
陰暦7月に行われていた事。
神事にひょうたんを半分に切った
柄杓の様な容器を使うが、
ひょうたんの様に中が空洞になったものは
霊魂を宿し災いを祓い、魔を遠ざける
呪力があると昔から考えらていた事。
などを挙げています。
この事から著者は
『別火氏の祭りが国造の祭りに
附着添加するようになったもの
と考えている。』
と書いています。

8月15日。この日、神楽殿の御守所で
身逃神事に使われた「真菰」が
ほんの一握りですが並べられ
自由に戴く事が出来ます。

※2019年8月撮影。

禰宜の出で立ちに真菰の苞(つと)を
左手に下げている姿が先の図にあります。
火縄は先導のための灯だとすれば
真菰を携えるのは道を浄める意味では
ないでしょうか?!
神様のお供を務めた際の真菰、
ご神威を頂けそうですね。

ちなみに。
なぜ2019年の真菰の写真かといいますと

私が戴きに参拝した午前11時には
今年の真菰はすでに残っていま
せんでした。

 

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【新コスメにまつわる神話や風土の話】過去のブログは下記から

新コスメにまつわる神話や風土の話 その28 ~ 国引き神話 風土記以外の伝承 編 ~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その29 ~ 谷あいの民家、集落の祈りの山(斐川町出西・神氷) 編 ~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その30 ~ 潮汲み 出雲大社 編 ~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その31 ~ 大社町と「うさぎ」を結ぶ峠道 ~

新コスメにまつわる神話や風土の話 その32 ~ 日御碕神社 海側に立つ鳥居の理由 編 ~

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