めのうさとえすこな散歩

古事記と出雲62 大国主命㉗ ~ 小さな小さな神様 スクナヒコナ登場 手間天神社、常世神社 編 ~

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みなさまこんにちは。
オンラインショップの朝倉です。
読み物を更新しました。
しばしお付き合いください。


前回はオオクニヌシの家系図に関しての

二回目、コトシロヌシとコトシロヌシを祀る
美保神社をご紹介しました。
今回は、古事記のストーリーを進めます。

古事記ではオオクニヌシの家系図が
紹介された後、舞台は美保関へ飛びます。

オオクニヌシが美保の岬にいらっしゃる時、
白波の向こうから小さな舟がやってきます。
その舟は「ガガイモの実」。
乗っている小さな神様は蛾の羽を
身にまとっています。

この小さな神様、名前を聞いても答えず
オオクニヌシのお付きの誰に聞いても
この神様の名前を知りません。

この時ヒキガエルが
カカシなら知っているはずです。
言います。

そこでカカシに尋ねてみると
「この神はカミムスビの御子、
スクナヒコナの神です。」と答えます。

オオクニヌシがカミムスビに確かめると
「確かに私の子で手の指の間から
こぼれ落ちた子どもだ。」と答えました。

さらにカミムスビは「二神は兄弟となりて
国を作り堅めよ。」とおっしゃられました。

 

その後、国作りを行う二神。
しかしながら、国作り半ばにして
スクナヒコナは海の向こうの永遠の国へ
旅立ってしまいます。

去ってしまった理由、そして
どの様にして去ってしまったか
古事記にその理由は何も書かれていません。

とまぁ、私が思うに
なんともインパクト抜群の
スクナヒコナの登場からの流れです。

ちょっと解説していきますね。
スクナヒコナが乗ってきた
「ガガイモの実」。
写真がWikipediaにありました。

緑の実が成りますが
写真は実った後の種を飛ばす頃の様です。
この実は長さ10センチほど。
舟形をしていますね。
この実を割った舟に乗っていたようです。

スクナヒコナが着ていた服は蛾(ガ)の羽。
また一説には鳥の羽ともある様ですが

何れにせよ、この事からも10センチの
舟に乗って現れるほどの
小さな小さな神様なのが解り
ます。

日本書紀ではミソサザイという
鳥の羽を着物にしているとあります。
ミソサザイは漢字で書くと「鷦鷯」。

美保関ではこの字の名字の方が
いらっしゃいます。読みは「ささき」。
どうしてなのか不思議でしたが
日本書紀には「鷦鷯」の読みを
「さざき」と補足してあり、
関わりがあるような気がします。

さてヒキガエルは何故カカシが知っていると
解っていたのでしょう???
これはヒキガエルが地面スレスレから
上を見上げている為、人が見ている世界より
広い世界を知っているという説があります。

Wikipediaにはこのヒキガエルの名前、
「タニグク」は「谷潜り(たにくぐり)」の
意味だという民俗学者の谷川 健一氏の説を
一例に載せています。
「谷」と考えれば窪んだ所、
それを潜るのであれば、この世の
全てを見渡していると想像出来ますね。

カカシのクエビコは「山田のソホド(ソオド)」と
書かれています。この「ソホド」は
「カカシ」の事です。
そして古事記には「この神は、」とありますので
ただのカカシという訳では無いようです。
更に補足で
「歩いたりは出来ないが、この世界の事を
尽く(ことごとく)知っている神である。」
と書かれています。
また、ヒキガエルのタニグクはカカシ神の事を
呼び捨てで紹介していますので
ヒキガエルもまた、神の様な存在だったのかも
しれませんね。

「山田」で「カカシ」といえば!
あのチェーン店、山田うどんのロゴマークに
やじろべえの様なカカシが

描かれているのは、もしかしたら
この事に由来しているのかも?
  ↓↓↓

※山田うどんHPより転載。

関東在住の方しか
知らない情報かもしれませんが(^^;)

 

スクナヒコナは国作りを任されるだけあって
御神徳は様々で、医薬・温泉・まじない・
穀物・知識・酒造・発酵醸造・石の神など
多岐に渡っています。

なるほど、スクナヒコナの御親神であり
天の神カミムスビはオオクニヌシだけでは
国作りを完遂させるのは難しいと
お察しだったのかもしれません。
「兄弟となりて・・・」の件は
「二神協力して」の意味に読み取れます。

さて。
スクナヒコナの足跡を辿ってみましょう。
出雲地方には降臨の地と伝承される神蹟が
二箇所存在します。
まずはコチラ。
手間天神社。  島根県松江市竹矢町805。

2020年3月撮影。

松江市から安来市に向かう国道9号線や
JRの車窓から目に入ってきます。
宍道湖から中海へと流れる大橋川の
その川に浮かぶ島です。
島は「塩盾島」と呼ばれてます。

船で渡るしかなく、
一般の参拝は島の対岸から遥拝となります。
年に1度、10月25日の例大祭の時のみ
神官と氏子が渡り祭祀を斎行されます。

2017年の例大祭に参列の機会がありました。
その時の写真があります。

年に1度、例大祭の日のみノボリが立ちます。


手水鉢と拝殿。


本殿は流造り。

この神社のある島の場所が
御親神の手の隙間からこぼれ落ちて

スクナヒコナが地上に降臨した場所。
その際、海水が凝り固まり島になった、
そんな伝承があるようです。

スクナヒコナが祀られる神社は
「天神社」と書いて「てんしんしゃ」と
読むのが慣例の様です。
これは「天神(てんじん)さん」との混同を
避けるためと思います。
天神(てんじん)さんと読めば菅原道真を祀る
天満宮が通常の様ですね。
手間天神社のご祀神はスクナヒコナと

菅原道真だそうです。
含まれる「天神」の文字から菅原道真も
後から
祀られたのではないでしょうか。

そしてもう一箇所。
常世神社。 出雲市常松町113

高浜歴史研究会がまとめた「高浜探訪」には
「元来、此の地を常世の郷といい、
少彦名命の天降り給える聖地と
言い伝えがある。」と書かれています。

私のとしては神社のある地区名「高浜」が
「高天原(たかあまはら、たかまのはら)」に
響きが近い事が由来に関わっているのではと
想像しています。


全国をみてみると
オオクニヌシとスクナヒコナの二神が

祀られるパターンに「温泉守護・温泉治療」
といった事があります。

松江市の玉造温泉もそうですし、
愛媛県松山市の道後温泉の隣の丘の
「湯神社」にも
二柱は祀られています。

松山市、湯神社 2015年6月撮影。

皆さんのお住いの所に「湯神社」といった
社名の神社があればもしかしたら
オオクニヌシとスクナヒコナのコンビが
開いた温泉か、温泉守護に祀られた
神社かもしれません。
温泉開発も二柱が担った
国作りの一端だったのでしょうか(^^)b

 

本日もお付き合いくださって
ありがとうございます。
またの更新をお楽しみに。
ご自愛くださいますように。

 

大国主命編 過去のブログはこちら

古事記と出雲㊱ 大国主命① ~ その出生地はどこか?~

古事記と出雲㊲ 大国主命② ~ オオクニヌシのお爺さんお婆さん 長浜神社編 ~

古事記と出雲㊳ 大国主命③ ~ オオクニヌシのお父さん 日御碕神社 編 ~

古事記と出雲㊴ 大国主命④ ~ 稲羽の素兎 白兎神社 編 ~

古事記と出雲㊵ 大国主命⑤ ~ 稲羽の素兎 白兎海岸 編 ~

古事記と出雲㊶ 大国主命⑥ ~ ヤガミヒメの故郷 賣沼神社 編 ~

古事記と出雲㊷ 大国主命⑦ ~ オオクニヌシの受難その1 赤猪岩神社 ~

古事記と出雲㊸ 大国主命⑧ ~ オオクニヌシの受難その2 赤猪石・赤猪神社跡(元宮) ~

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古事記と出雲51 大国主命⑯ ~ スセリヒメ終焉の地 唐王神社 後編 ~

古事記と出雲52 大国主命⑰ ~ 大国主命の使いはウサギ?ネズミ? ~ 

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