めのうさとえすこな散歩

古事記と出雲67 大国主命㉜ ~ 小さな小さな神様 その6 国作りの軌跡 静之窟 編 ~

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みなさまこんにちは。
オンラインショップの朝倉です。
読み物を更新しました。
しばしお付き合いください。

前回はオオクニヌシとスクナヒコナが
国作りのために平野や内海を眺めた
といわれる岩や、相談をしたと伝わる

岩がある山「大黒山」を紹介しました。

同じ様な伝承がある山が他にもあります。
伯耆富士こと「大山」です。

大山にある大神山神社のHPには
「神祗志料」左比売山神社の条には
「云々、昔大己貴命、少名彦名命、須勢理姫命、
伯耆国大神山に御坐、出雲國由来郷に
来坐して云々」と書かれており、

大山の山頂に立って雲の上から
草昧の国土を見下ろし国見をされて
国造りを相談なされたと伝えています。
とあります。

大山(弥山)山頂より。眼下は境港、美保関方面。

大己貴命はオオクニヌシの別名です。
「オオクニヌシとスクナヒコナと
オオクニヌシの妻、スセリヒメが
大山にいらしゃった。
出雲の「由来郷」に来られた・・・」
とありますね。大山の山頂から国作りの
相談をした後、西に移動されたようです。

そう、この内容で語られているのは
佐比賣山神社ですので、鳥取の西端から
出雲西端まで大移動してるんですね。
佐比賣山(さひめやま)神社。
島根県大田市三瓶町多根イ305

更に佐比賣山神社の由来には
佐比賣山々麓に池を穿ち田畑を開き
農事を起こし民に鋤鍬の道を
教え授けられたので其の徳を仰ぎ
この里に神籬を立て祭ったものである。
依って里の名を多根と言うと伝えり。
北三瓶会(きたさんべかい)のHPに
書かれています。

この2つの山、大山と三瓶山は
国引き神話の際に国を引いてきた「綱」を
繋ぎ止めた「杭」ですので面白い流れですね。

さてさて。
今回の題名に掲げた「静之窟」。
「しずのいわや」と読み、国作りの際に
国作りの際に石窟(せっくつ)を仮住まいとした
という伝承があります。

石窟とは岩場を掘削したり、洞穴をさしていう
言葉のようです。
国作りは日本全国に及んだと思いますが
「静之窟」として伝承される場所は
私の記憶では4箇所あると認識しています。

静之窟その1

島根県大田市静間町630ー10 静之窟。

波打ち際にある海蝕洞窟のこちら
現在は崩落の恐れがあり、
中に入る事は出来ません。

奥行きが45mもあるという
波の浸食によってできた海蝕洞です。
二方向に入口があります。

中には 和歌が彫られた歌碑が建っています。

歌碑の題字「静之窟」は
徳川家達(いえさと)。
和歌の書は出雲大社第80代国造の
千家尊福(せんげたかとみ)の
書だそうです。

波打ち際近くのこの神蹟には
神社があったそうですが
高波のため流されてしまい
現在は垂水山という近くの小高い場所に
遷座されています。 こちら。
静間神社 大田市静間町垂水1765

静之窟その2

次にこちら
志都岩屋神社 島根県邑智郡邑南町岩屋1714

こちらは神社のある山、弥山一帯が
巨石に溢れた山です。

本殿の背後には
「鏡岩」と呼ばれる巨石が鎮座しています。

そして静之窟と伝承されるのがこちら。

案内板には「古志都(こしづ)」と
書かれています。
二神の仮の住まいとしては

ちょっと狭いような気もしますね^^;

静之窟その3

今度は島根県を離れ、隣の鳥取県にある
静之窟の伝承地です。こちら。
粟島神社
 鳥取県米子市彦名町1404

粟島と呼ばれるこの島。以前は中海に浮かぶ
島だったそうです。
この島の傍らに洞穴があります。

人魚の肉を食べてしまい
不老長寿になってしまった八百比丘尼
(やおびくに、はっぴゃくびくに)の
伝承がある洞穴なのですが、同時に
静之窟の伝承を併せ持つ神蹟です。

この粟島にはオオクニヌシと出会いの
伝承がある神蹟もありますね。

 

静之窟その4

更に島根を離れた場所にも伝承地があります。
前々回の「古事記と出雲」で

紹介させて頂いた「生石(おうしこ)神社」に
実は
静之窟伝承があります。

「静之窟」の「窟(いわや)」は「岩屋」の事で
岩の屋根、そこから「住まい」となっていると
想像するのですが、こちらは屋根に当たる場所が
見当たらないようです。
ではなぜ「静之窟」の候補に上がるかというと
万葉集に載る和歌に由来するのではと感じます。
その和歌は
 大汝(おほなむち)、少彦名(すくなひこな)の、
いましけむ、志都(しず)の石屋(いわや)は、
幾代(いくよ)経(へ)にけむ。
※オオナムチ(オオクニヌシ)とスクナヒコナが
いらっしゃったという静之窟は、
いったいどのくらいの月日が流れたのだろう
万葉集 巻三(三五五)

この和歌の詠み人は
生石村主真人(おいしのすぐりのまひと)。
神社の名称「生石神社」と詠み人の名前に
かぶる所があります。
関係を感じずにはいられませんね。

静之窟? 私が思う静之窟

過去のブログで
何度か紹介させて頂いている神社に
私が思う静之窟があります。
こちら。八千矛山大国主神社。
島根県大田市仁摩町大国613。

この神社の裏山にある「みこもり岩」。

積み重なる巨石の中に降りていけます。

この神社のある地名「大国」の由来に
八千矛山に宮居を定め給う(みこもり穴か)
によって大国と申す由 云々・・・
とあり神社の社殿にあり、オオクニヌシが
この穴に住まわれた伝承があります。

私は国作りの仮の住まいでスクナヒコナと
この場所で相談をしたのではないかと
思っています。

国作りは全国に渡り行われた訳ですので
「仮の住まい」はあちらこちらにあって
然りの様な気がしますね。
もしかしたら皆さんのお住いの地域にも
二神の仮住まい伝承があるかもしれませんね。

 

本日もお付き合いくださって
ありがとうございます。
またの更新をお楽しみに。
ご自愛くださいますように。

 

大国主命編 過去のブログはこちら

古事記と出雲㊱ 大国主命① ~ その出生地はどこか?~

古事記と出雲㊲ 大国主命② ~ オオクニヌシのお爺さんお婆さん 長浜神社編 ~

古事記と出雲㊳ 大国主命③ ~ オオクニヌシのお父さん 日御碕神社 編 ~

古事記と出雲㊴ 大国主命④ ~ 稲羽の素兎 白兎神社 編 ~

古事記と出雲㊵ 大国主命⑤ ~ 稲羽の素兎 白兎海岸 編 ~

古事記と出雲㊶ 大国主命⑥ ~ ヤガミヒメの故郷 賣沼神社 編 ~

古事記と出雲㊷ 大国主命⑦ ~ オオクニヌシの受難その1 赤猪岩神社 ~

古事記と出雲㊸ 大国主命⑧ ~ オオクニヌシの受難その2 赤猪石・赤猪神社跡(元宮) ~

古事記と出雲㊹ 大国主命⑨ ~ オオクニヌシの甦り 清水井 清水川神社 ~

古事記と出雲㊺ 大国主命⑩ ~ オオクニヌシの受難その3 大石見神社 編 ~

古事記と出雲㊻ 大国主命⑪ ~ 救世主 オオヤビコはスサノヲの御子神? ~

古事記と出雲㊼ 大国主命⑫ ~ イソタケルを祀る「韓国伊太氐神社」の不思議 編 ~

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古事記と出雲51 大国主命⑯ ~ スセリヒメ終焉の地 唐王神社 後編 ~

古事記と出雲52 大国主命⑰ ~ 大国主命の使いはウサギ?ネズミ? ~ 

古事記と出雲53 大国主命⑱ ~ オオクニヌシの琴 琴引山・琴弾山神社 編 ~

古事記と出雲54 大国主命⑲ ~ 八十神討伐。オオクニヌシの築いた城「城名樋(きなび)」編 ~

古事記と出雲55 大国主命⑳ ~ 八十神討伐とその後のオオクニヌシ。 木次神社・三屋神社 編 ~

古事記と出雲56 大国主命㉑ ~ 八十神討伐にまつわる地名 加茂神社(屋代神社)・屋裏八幡宮 ~

古事記と出雲57 大国主命㉒ ~ ヤガミヒメ再登場 御井神社 実巽神社 編 ~

古事記と出雲58 大国主命㉓ ~ コノマタの神は稲羽に里帰り出来なかった? 阿陀萱神社 編 ~

古事記と出雲59 大国主命㉔ ~ 翡翠の女神 ヌナカワヒメ ~

古事記と出雲60 大国主命㉕ ~ スセリヒメ再登場。 オオクニヌシの家系図 阿須伎神社・乙見社 編 ~ 

古事記と出雲61 大国主命㉖ ~ オオクニヌシの家系図その2 美保神社 編 ~

古事記と出雲62 大国主命㉗ ~ 小さな小さな神様 スクナヒコナ登場 手間天神社、常世神社 編 ~

古事記と出雲63 大国主命㉘ ~ 小さな小さな神様 その2 美保神社の摂社を巡る 編 ~

古事記と出雲64 大国主命㉙ ~ 小さな小さな神様 その3 スクナヒコナのご神徳の考察 編 ~

古事記と出雲65 大国主命㉚ ~ 小さな小さな神様 その4 続・スクナヒコナのご神徳の考察 編 ~

古事記と出雲66 大国主命㉛ ~ 小さな小さな神様 その5 国作りの軌跡 大黒山 兵主神社 編 ~

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